2004年殿堂入り発表 (映画史博物館)
≪はじめに≫ 今年から、毎年年末に1年の締め括りとして、その年最も印象的だった作品を「殿堂入り」として3作品選出することになった。3作品は、週刊シネママガジン編集長が厳重な審査のもとに決定するが、主な審査基準は、作品自体が良くできていることと、それなりの話題性があり、ヒットしていることの2つである。また、映画部門とは別に俳優部門も設け、こちらも毎年3人の俳優を選出する。
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
≪寸評≫ この映画で何よりもたたえるべきことは「作ったこと」に尽きる。これは単純に考えても大変な偉業である。かつてデヴィッド・リーンは「アラビアのロレンス」を作り、「映画を作る」という意義を我々に教えてくれたが、この年もピーター・ジャクソンがこの映画をもって、我々に同じものを教えてくれた。その世界観のスケールのでかさ、練りこまれた内容、セットの豪華さ、すべてが胸一杯のボリュームである。なにもかもが最後の局面へと突入していくクライマックスの壮大なるスペクタクル・シーンでは、皆が命懸けで戦っているという意志が本当にひしひしと伝わってくる。これが映画の真の面白さだと思う。
ビッグ・フィッシュ
≪寸評≫ ティム・バートン監督にこんな才能があったなんて意外である。人間の虚栄をファンタジックに映像化する様は、フェリーニを彷彿とさせる。あきらかに作り物の世界なのだが、ひとつひとつのビジョンが、あまりにも美しく、まるで音楽のようだ。私はこれを見てからもう半年になるが、今でも断片的に幾多の大袈裟なシーンが脳裏に焼き付いたままだ。人生の想い出なんてものは、このように断片的に大袈裟に強調されて記憶されるもので、だからこそ美しいのだろう。またこの映画は、人間は一人では生きてはいけないということも教えてくれた。
ジャック・ブラック
「スクール・オブ・ロック」
≪選出理由≫ この映画はただのコメディ映画だと思っていたら大間違いだった。ジャック・ブラック演じる主人公は、頭も外見も悪くて、どうしょうもないダメ男なのだが、やるときはやる。本気になって物事に打ち込むそのひたむきな姿は、最高にかっこよかった。
ナオミ・ワッツ
「21グラム」
≪選出理由≫ 寂しげな表情が色っぽく、ラブ・シーンも生々しい。彼女の演技力がなければ、この映画は凡作に終わっていただろう。そう思わせるほど、ナオミ・ワッツの演技は真に迫っていたし、映画における役者の存在価値を十分に再認識させるものだった。
スカーレット・ヨハンソン
「ロスト・イン・トランスレーション」
≪選出理由≫ この映画も役者主導の映画と考えて良く、スカーレット・ヨハンソンの物静かな表情が作品を支えている。彼女を見ていると、なんだか切なくなってくる。日常風景的であり、まるで自分の顔を鏡で見ているような共感を覚える
≪2004年総評≫ 2003年まではまだまだ軽視されていたCG技術も、2004年になってからの急速な発達を見ると、誰しも認めざるをえないものになってきた感がある。これは技術的進歩というよりは、描き方が洗練されたととるべきだろうか。日本のアニメーション映画も宮崎駿ら巨匠たちの作品が出そろい、海外でますます話題を呼ぶが、一方でアメリカからも娯楽性を追求した「Mr.インクレディブル」や3D映画の革命を起こした「ポーラー・エクスプレス」など、フルCGのアニメーション映画が公開された。非CG映画では、マイケル・ムーア監督がブッシュを批判した「華氏911」が社会現象にまで発展し、映画を政治と重ね合わせて語る時代になるが、それに便乗してドキュメンタリー・ブームの幕開けを告げ、「ディープ・ブルー」「スーパーサイズ・ミー」などが続々と公開された。
2004年は韓国の年だったといってもいいかもしれない。テレビドラマ『冬のソナタ』で韓流ブームが巻き起こり、ヨンさまを代表する美形俳優や、チェ・ジウら美人女優が日本で話題になり、「シルミド」、「殺人の追憶」、「オールド・ボーイ」など、韓国製の映画が急成長。韓国映画専門雑誌も多数刊行され、隣の国はただならぬ盛り上がりを見せた。日本では「世界の中心で、愛をさけぶ」の発表でセカチュー・ブームが到来。純愛ものが再評価される一方で、「下妻物語」のようなぶっ飛んだ傑作もあった。「誰も知らない」では日本人がカンヌ映画祭で史上最年少の男優賞を受賞した。
数ある中でも異色な作品を作ったのはタランティーノで、流行の波に流されない「キル・ビルVol.2」という独りよがりな映画を発表したが、これも高く評価された。ジャンル的傾向では「Mr.インクレディブル」や「キル・ビル」を含めてヒーローものが去年に続く健闘ぶりで、特に「スパイダーマン2」は痛快なCG描写など、1作目を凌ぐ傑作と絶賛され、2004年の流行を象徴する作品になった。
正編の内容を超える続編ものが目立つ年であったが、「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」は圧勝的スケールで、続編ものとはいえ、2004年のベストワンにふさわしい作品であった。
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
≪寸評≫ この映画で何よりもたたえるべきことは「作ったこと」に尽きる。これは単純に考えても大変な偉業である。かつてデヴィッド・リーンは「アラビアのロレンス」を作り、「映画を作る」という意義を我々に教えてくれたが、この年もピーター・ジャクソンがこの映画をもって、我々に同じものを教えてくれた。その世界観のスケールのでかさ、練りこまれた内容、セットの豪華さ、すべてが胸一杯のボリュームである。なにもかもが最後の局面へと突入していくクライマックスの壮大なるスペクタクル・シーンでは、皆が命懸けで戦っているという意志が本当にひしひしと伝わってくる。これが映画の真の面白さだと思う。
ビッグ・フィッシュ
≪寸評≫ ティム・バートン監督にこんな才能があったなんて意外である。人間の虚栄をファンタジックに映像化する様は、フェリーニを彷彿とさせる。あきらかに作り物の世界なのだが、ひとつひとつのビジョンが、あまりにも美しく、まるで音楽のようだ。私はこれを見てからもう半年になるが、今でも断片的に幾多の大袈裟なシーンが脳裏に焼き付いたままだ。人生の想い出なんてものは、このように断片的に大袈裟に強調されて記憶されるもので、だからこそ美しいのだろう。またこの映画は、人間は一人では生きてはいけないということも教えてくれた。
ジャック・ブラック
「スクール・オブ・ロック」
≪選出理由≫ この映画はただのコメディ映画だと思っていたら大間違いだった。ジャック・ブラック演じる主人公は、頭も外見も悪くて、どうしょうもないダメ男なのだが、やるときはやる。本気になって物事に打ち込むそのひたむきな姿は、最高にかっこよかった。
ナオミ・ワッツ
「21グラム」
≪選出理由≫ 寂しげな表情が色っぽく、ラブ・シーンも生々しい。彼女の演技力がなければ、この映画は凡作に終わっていただろう。そう思わせるほど、ナオミ・ワッツの演技は真に迫っていたし、映画における役者の存在価値を十分に再認識させるものだった。
スカーレット・ヨハンソン
「ロスト・イン・トランスレーション」
≪選出理由≫ この映画も役者主導の映画と考えて良く、スカーレット・ヨハンソンの物静かな表情が作品を支えている。彼女を見ていると、なんだか切なくなってくる。日常風景的であり、まるで自分の顔を鏡で見ているような共感を覚える
≪2004年総評≫ 2003年まではまだまだ軽視されていたCG技術も、2004年になってからの急速な発達を見ると、誰しも認めざるをえないものになってきた感がある。これは技術的進歩というよりは、描き方が洗練されたととるべきだろうか。日本のアニメーション映画も宮崎駿ら巨匠たちの作品が出そろい、海外でますます話題を呼ぶが、一方でアメリカからも娯楽性を追求した「Mr.インクレディブル」や3D映画の革命を起こした「ポーラー・エクスプレス」など、フルCGのアニメーション映画が公開された。非CG映画では、マイケル・ムーア監督がブッシュを批判した「華氏911」が社会現象にまで発展し、映画を政治と重ね合わせて語る時代になるが、それに便乗してドキュメンタリー・ブームの幕開けを告げ、「ディープ・ブルー」「スーパーサイズ・ミー」などが続々と公開された。
2004年は韓国の年だったといってもいいかもしれない。テレビドラマ『冬のソナタ』で韓流ブームが巻き起こり、ヨンさまを代表する美形俳優や、チェ・ジウら美人女優が日本で話題になり、「シルミド」、「殺人の追憶」、「オールド・ボーイ」など、韓国製の映画が急成長。韓国映画専門雑誌も多数刊行され、隣の国はただならぬ盛り上がりを見せた。日本では「世界の中心で、愛をさけぶ」の発表でセカチュー・ブームが到来。純愛ものが再評価される一方で、「下妻物語」のようなぶっ飛んだ傑作もあった。「誰も知らない」では日本人がカンヌ映画祭で史上最年少の男優賞を受賞した。
数ある中でも異色な作品を作ったのはタランティーノで、流行の波に流されない「キル・ビルVol.2」という独りよがりな映画を発表したが、これも高く評価された。ジャンル的傾向では「Mr.インクレディブル」や「キル・ビル」を含めてヒーローものが去年に続く健闘ぶりで、特に「スパイダーマン2」は痛快なCG描写など、1作目を凌ぐ傑作と絶賛され、2004年の流行を象徴する作品になった。
正編の内容を超える続編ものが目立つ年であったが、「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」は圧勝的スケールで、続編ものとはいえ、2004年のベストワンにふさわしい作品であった。