アンソニー・ホプキンス (今週のスター)

 俳優になるために生まれてきた男

 アンソニー・ホプキンスの演技力は素晴らしい。前に一度彼のドキュメンタリーを見たことがあるが、「役を演じる」のでもなく、「役になりきる」のでもなく、彼は「役そのもの」になっている。だから、彼の場合、役によって顔の表情、声がまるで違う。ロバート・デ・ニーロが役になりきるために減量したり髪の毛を抜いたりするのを見て、「ばかげてる」といったのはホプキンスだ。そんなことしなくても、役にはなれるという自信。すごくないかい? ジェームズ・アイボリー作品に出だしてからの彼はもう無敵! 僕は「日の名残り」のホプキンスのノーブルな演技を見たときは、正直ぶったまげたぞ。

 とはいっても、ホプキンス、かなり遅咲きである。10年前までは知る人ぞ知る存在で、地味だった。イギリス映画のちょっとした脇役だったからね。「冬のライオン」で大物と共演するも、パッとせず、「マジック」(監督はリチャード・アッテンボロー。ホプキンスはこの監督の作品に5本も出ている)で高い評価を得て、翌「エレファント・マン」でも性格俳優としての実力を見せつけるも、両者ともホラー映画だったので、その後もしばらくは大した役をまわされていない。
 やがて90年代に入ると、彼は最も成功を掴むイギリス人となった。「羊たちの沈黙」でアカデミー主演男優賞を受賞してからは、有名監督の手がける新作の出演依頼が次々と舞い込む。「ドラキュラ」「ハワーズ・エンド」「永遠の愛に生きて」「ニクソン」「サバイビング・ピカソ」「アミスタッド」・・・・。そのどれもが画になる適役ばかりで、一躍アカデミー賞の常連に。
 最近は「マスク・オブ・ゾロ」などで、派手なアクションも披露している。

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