100年前のクラシック映画から映画史を読み解く


これが名珍タイトル・デザイン (特別企画)

 

企画12
これが名珍タイトル・デザイン

 

タイトル・デザインについて
 映画が始まって、"GONE WITH THE WIND"の文字が雄壮なタラのテーマと共にフレームいっぱいに右から左へと流れていく「風と共に去りぬ」の感動。ここからタイトル・デザインの華やかな歴史が開く。
 僕は映画を見るとき、何よりもまずオープニングにわくわくする。オープニングを見た瞬間に、その映画が傑作かそうでないかわかってしまうほど、第一印象は大事だ。このオープニングを「タイトル・デザイン」といい、観客を引き込めるか否かを左右する重大なポイントとなっている。だからプロデューサーの人は、このタイトル・デザインだけのために、プロのタイトル・デザイナーを雇うわけである。
 これがなかなかユニークなものばかりなので(ひょっとしたら最近の映画はタイトル・デザインの方が面白くなってきたかも)、このコーナーでちょっと取り上げてみることにしよう。
風と共に去りぬ
 

ソール・バス
 タイトル・デザインについて語るとき、決して忘れてはならない人物がソール・バス。この人は「タイトル・デザイン」という職業をいっきに知らしめた人物である。映画のポスターや予告編などを制作していたバスは、やがてタイトル・デザインの第一人者となっていく。オットー・プレミンジャー、アルフレッド・ヒッチコック、マーティン・スコセッシらの作品タイトルを手掛け、ヒッチコックの「サイコ」のシャワーのシーンの絵コンテを受け持ったり、キューブリックに「スパルタカス」の戦闘シーンを任せられるほどのデザイン・センスを見せつけた。映画史に名高い名タイトルのほとんどはソール・バスの手によるものといっても過言ではないほど、彼の作品群は素晴らしい。

黄金の腕
七年目の浮気
八十日間世界一周(エンディング)

大いなる西部
めまい
北北西に進路を取れ

サイコ
ウエストサイド物語
エイジ・オブ・イノセンス
 

モーリス・ビンダー
 ソール・バスと並び人気の高いタイトル・デザイナー。スタンリー・ドーネンの作品が有名だが、それより何といっても「007」シリーズのオープニング・シーンが素晴らしい。アラベスク調のデザインをスタイルとしており、「シャーロック・ホームズの冒険」、「ドラキュラ」、「星の王子さま」などを手掛け、複数からなる異なる映像を流れるようにつなげてみせた。彼のデザインは、本編と分けて見ても面白い。

007は殺しの番号
シャレード
ラストエンペラー
 

ロバート・アルドリッチ監督
 僕の個人的な考えだが、アルドリッチほどタイトルバック(字幕の後ろの背景)にこだわった監督はいまい。そのどれもが男気とダイナミズムにあふれたものばかり。何といってもかっこよかった。ときには子供の頃に熱中した特撮ヒーローもののようなノリだって見せてくれる。僕はアルドリッチ作品を見るびに、最初のシーンが楽しみで仕方がないのである。

ヴェラクルス
キッスで殺せ
ふるえて眠れ

飛べ!フェニックス
特攻大作戦
燃える戦場
 

リチャード・ウィリアムズ
 本職は「ロジャーラビット」などを手掛けたこともあるアニメーターで、根っからのタイトルデザイナーというわけではないが、その作画力に人気があり、「何かいいことないか子猫チャン」や「ピンク・パンサー・シリーズ」、「007/カジノロワイヤル」などのタイトルアニメを担当した。
ローマで起った奇妙な出来事
 

ダン・ペリ
 ダン・ペリは「タクシードライバー」の霧の中からタクシーが現れる演出で名声を得、数多くの映画に関わった。彼はタイトル・デザインが本編と独立しているものとしてでなく、本編と一体型になっているものとして解釈。タイトルから本編へと自然に移り変わる演出を見せてくれる。好例は「スター・ウォーズ」で、タイトルが出た後にストーリーが流れて宇宙船が現れ、観客を驚かせた。最近の作品では「ザ・プレイヤー」のタイトルバックが有名。

タクシードライバー
スター・ウォーズ
未知との遭遇
 

カイル・クーパー
 現在最も売れているタイトル・デザイナー。「セブン」で一躍有名になり、「ミミック」では”あのカイル・クーパーがタイトルをデザイン”などと宣伝されてしまったほどの人気者。「ニクソン」や「スポーン」なども手掛ける。
ブレイブハート
 

その他、印象的なタイトル・デザイン
 僕は地味なタイトルデザインも好きだけど、やっぱり見ていてワクワクしてくるタイトル・デザインの方が好きかな。
 「殺人狂時代」は古典的サイレント映画を意識したデザインがスリリングなBGMとマッチ。花の上には筆記体で「殺人喜劇」と書かれている。
 「用心棒」は音楽と映像にゾクゾク。
 「パルプ・フィクション」は文字だけでかでかと出てくるところが気持ちよく、タイトル・デザインの価値の高さを確かめさせてくれた。

M
イワン雷帝
殺人狂時代

用心棒
他人の顔
吸血鬼

ワイルドバンチ
Z
ファントム・オブ・パラダイス

フェイク
パルプ・フィクション
ナチュラル・ボーン・キラーズこの他にもコクトー、トリュフォー、ウディ・アレンの作品も紹介したかった。
 

オリジナルページを表示する