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『ファイナル・デッドサーキット3D』
ドミノ倒し形式で描く大惨事
今年は3D元年といわれていて、沢山の3D映画が公開されたが、見世物という評価はなかなか拭いされないでいた。しかしそこを逆手にとってガンガン見世物として売り込む映画も存在する。それが『ファイナル・デスティネーション』の最新作である『ファイナル・デッドサーキット3D』。従来のシリーズの魅力はそのままパックして、さらに3Dの見せ場にこだわった感じで、とにかく画面がこれでもかこれでもかと飛び出しまくる。接写も尋常じゃなく、ここまで近づくかというくらい被写体の目の前でカメラを回してくれる。もちろんお約束で金髪ギャルのボインも立体化するぞ。
この映画の中では何百人という死者が出るが、一人として「殺されない」。全員が「事故死」なのである。本作ではこれでもかとあらゆる事故の映像が映し出される。カーアクシデントもあればプールの排水溝に挟まれて死ぬなんてエグイ死に方もある。そうきたかと感心してしまうほどバラエティに富んでいる。一部、死ぬときにレントゲン写真みたいな映像になるところがあるが、ここまで痛々しい映像は他にないので必見に値する。
この恐怖は、「何かこれから嫌なことが起きそうな予感」、ここに尽きる。風船が割られるとわかっているとびくびくするものだが、それと同じでこれから災難が起きることをわかっていて見ることになるので、もうドキドキ。誰にでも身近に起こり得そうな事故を描いているからなおさら怖い。この映画を見た後は工事現場やプールには行きたくなくなるだろう。
この映画で起きる事故は、突発的に起きるものではなく、何かが引き金となって連鎖運動で発生するものである。ピタゴラ装置なんてものが話題になったが、まさにあの原理。たまたま倒れた棒切れが別の何かに当たって、それがまた別の何かに当たって、という感じ。もうこの連鎖を見ているとどうなるんだろうとドキドキする。死なすまでの課程をいかに面白くみせるか、そのアイデアに驚く。「そこまでやるか」と、怖さを通り越して思わず笑ってしまうことも。
一番怖いのは美容院のシーン。どこにでもある美容院。椅子がミシミシといかにも危なっかしい。そしてハサミのクロースアップ。綺麗なお姉さんの前髪を美容師がジョキジョキと切っている様子をじわじわとじらすように接写して映し出している。このときの立体感が生々しく、変な汗が出てしまうこと請け合い。
これを見ると、近年の3D技術が格段に進歩したことに驚かされるだろう。2・3年前の3D映画は、眼鏡をなるべく並行にかけなければならず、首を傾げると映像が少しぼやけてしまうなど欠点があったが、現在はその欠点も克服しており、見ている途中で目が疲れることもなくなった。最近では3Dについてのニュースも色々なところで見るようになり、ますます実写3D映画の気運が高まっている。公開日の10月17日は、新宿の2大シネコンで日本初3D長編『戦慄迷宮3D』とガチンコ対決も待っており、今まさに3Dの時代が到来しようとしている。(2009/10/12 澤田英繁)