100年前のクラシック映画から映画史を読み解く


解析「大長編ドラえもん」 (特別企画)

 

企画11
解析「大長編ドラえもん」

 

 いきなり「ドラえもん」が出てきて、サイトの常連さん方はさぞかし動揺していることだろうと思う。何を隠そう僕は大の藤子・F・不二雄ファンなのだ(「藤子・F・不二雄まんがを語る」を読んで大感動しまくった)。
 映画のサイトで「ドラえもん」は場違いなのじゃないか?という声もあると思う。いやしかし、映画産業において、「ドラえもん」は日本の映画界を支えているといっていいほど、重要な位置を占めているのだ。ドラえもんのヒットはほぼ約束されており、毎年1本必ず公開しているので、映画館はずっと安泰である。僕も2本だけ映画館で見たことがあるが、いずれも満員だった。隅のスペースにも座れないし、一番後ろの手すりのところも人でギューギュー。子供は遊び回っているし、二階の方も鮨詰めで、とても見られた状態じゃなかった。少なくとも僕の人生においては、このときより人が入っているところを見たことがない。それだけ「ドラえもん」は観客を引きつける力がある。

 事実、映画の内容の方も、ハリウッド映画に負けないくらい面白いのである。SFとアクションいっぱいの一大アドベンチャー仕立てで、毎度舞台を変え(あるときはジャングルへ、あるときは海へ、あるときは宇宙へ、あるときはパラレルワールドへ、あるよきは未来へ)、大人でも満足のいく出来だ。短編では表現できなかった、登場人物の「成長」も映画では描かれている。
 大長編の面白いところは、やはり出だしだろう。ちょっとした偶然から、とんでもない大冒険へといざなわれるまでのプロセスの切り口がすこぶる巧い。僕は大長編の魅力はこの前半にあると思う。もちろん後半も面白いが、前半の奇想天外な筋書きには毎度敬服させられて仕方ない。
 とはいっても、藤子先生の漫画は根はマンネリである。いつもどの作品でも同じ様なテーマのものが描かれる。だがしかし、それは僕らが望んでいた夢と空想を視覚化したものであり、何度見ても興奮はさめない。ときに「海底2万マイル」など古典物語を取材することもあるが、よく知られた世界観を藤子ワールドにパロディ化するアイデアは絶品である。

 僕は中学の頃初めて「ドラえもん」の映画を見て、本当に怖かった。大長編にはいつも怖さがあった。ごく身近に感じることのできる怖さがあった。だからこそ、今でも映像が脳裏に焼き付いている。

 それにしても、どうも「ドラえもん」は幼稚な漫画と受け止められている傾向がある(僕もそう思っていた)。でもそれは違う。それは「ドラえもん」を幼稚という人が幼稚であっただけだ。本当は「ドラえもん」の良さ(巧さ)は大人になってからわかる。目が肥えてきた今、僕は「ドラえもん」のテクニカルな話術に感嘆するしかない。
 

大長編ドラえもん 早見表
タイトル 評価 コメント
のび太の恐竜 ★★★★1/2 記念すべき最初の劇場用「ドラえもん」。最初とあって、テレビシリーズを拡大したような作りで、大長編ならではの奇想天外ハラハラドキドキという作風には今一歩達していないが、全編にほとばしる若々しさと情熱には素直に感動してしまう。アメリカ横断キャンプも楽しそう。恐竜がのび太を本当の親と思うところなど、涙がでる。のび太はいい親である。
のび太の宇宙開拓史 ★★★★ いよいよこの作品から劇場用「ドラえもん」のスタイルが確立される。F氏は舞台を宇宙にもってきて、宇宙空間とのび太の部屋の空間をドッキングさせた。縦と横の概念を覆した斬新な発想もいい。のび太がスーパーマン気分になって悪をこてんぱんにやっつけてしまうところも気持ちがいい。
のび太の大魔境 ★★★★ 僕が小さい頃大好きだった作品。のび太でなくてジャイアンを中心においた構成がよく、ジャイアンがみんなに隠れてホロリと泣くところなど、じんとくる。道具を全て置いてきてしまい、どこでもドアも焼失。どうしようもない事態のまま危険なジャングルを旅していくところは、まだ小さかった僕には怖すぎた。
のび太の海底鬼岩城 ★★★★ 水の中を歩く光景からビジュアル的に面白く、単なるピクニックのシーンでも、夢いっぱいだ。ただでさえも素晴らしいのに、後から強大な敵を相手に戦って、スリルもかなりのもの。テキオー灯の使い方も巧い。
ドラえもんの帽子では、「海底鬼岩城」「大魔境」「ドラビアンナイト」でかぶってるやつが便利さベスト3だね。
のび太の魔界大冒険 ★★★1/2 とにかくシナリオの構成力に驚く一本。その意味では大長編ベスト。のび太の前に石になったのび太が現れる意外性。魔法と科学という対極が絡み合う独創性。しかしドラミに助けられるのは展開に行き詰まったときのわがままに思えて、嫌なパターンである。まだ本当は終わりじゃないよ、という落ちは斬新だが、ドラミの登場と共に、大長編特有の恐怖感が薄れた気もする。
のび太の宇宙小戦争 ★★★1/2 明らかに「ガリバー旅行記」のもじりである。敵がとても小さいため、あまりスリルはないが、スモールライトを奪われてしまうことで、のび太たちも小さいまま戦う羽目に。戦闘の規模が小さいため、感動も小さい。
のび太と鉄人兵団 ★★★1/2 ロボットアニメの影響だろうか、超巨大ロボットが登場する。鏡の向こうのパラレル・ワールドにロボットを移し、ロボット軍団と大戦争を繰り広げる。「藤子さんのSF短編」と「ドラえもん」と「ロボットアニメ」の3要素がほどよくマッチ。ロボットが情を持つあたりは、定石ながらもそこそこ楽しめる。
のび太と竜の騎士 ★★★ 今回は舞台を地下に移した。奇想天外なところはいいのだが、のび太が0点のテストを地中深くに隠したいと考えるところから話が始まるところが強引な感じがして、いきなり興が醒めてしまう。ただし竜人間に捕らえられたりと、そこそこのスリルは盛り込んである。
のび太のパラレル西遊記 ★★★1/2 映画だけのオリジナル作品だけど、これがなかなか良くできている。孫悟空の世界をパロディにしたところがちょっとしたアイデア。オープニングの見せ方も独特。他では味わえないオリエンタルな雰囲気がある。小さい頃ビデオレンタルで借りてみて大興奮した記憶がある。ちなみに藤子先生が初めて感動した本は「孫悟空」なんだそうです。
のび太の日本誕生 ★★★★ 僕が初めてみた大長編。「大長編ドラえもん」の10周年目にあたる作品で、ドラ初のドルビー。監督自身もこれが一番好きらしい。何もない大昔の日本に来て、みんなで自分たちの楽園を造る。壁に穴を掘ったり、畑を耕したり、そこには夢がある。例によって後から強大な敵が現れるが、土偶の化け物やギガゾンビにはドラえもんの道具など通用しない。子供の頃はこの映画は本気で怖かったものである。のび太が大活躍するところも嬉しい。
のび太とアニマル惑星 ★★★1/2 僕が初めて映画館で見た作品だ。ドラえもんのチョロQをもらって大喜びした記憶がある。これも「日本誕生」同様、当時中学生だった僕にはおっかない内容だった。「月のツキ」という面白い道具も出てくるが、これが見もの。相変わらず、のび太が一人で大活躍し、のび太ファンの僕はゴキゲン。
のび太のドラビアンナイト ★★★ 「アニマル惑星」に興奮した勢いで、これも映画館に見に行ってしまった。絵本の世界に入るところがまたユニークなのだが、現実の世界と絵本の世界の次元がつながるところはどうも好きじゃなかった。大長編でいつも期待しているのは絶体絶命のピンチになることだが、同作ではこういうシーンにあまり危機感がない。
のび太と雲の王国 ★★★1/2 雲の上に国を建てる発想はなかなか面白く、城を建てたり、湖を作ったり、プラモデルと似たような趣味的楽しみがある。ドラえもんが壊れてしまうのも思い切ったアイデアだ。懐かしい登場人物がいっぱいでてくるのもいい。最後にドラえもんが意を決して自爆して世界を救うところも、ありがちながら感動してしまう。
のび太とブリキの迷宮 ★★★ 旅行に連れていってやろう、というパパの考えから冒険が始まるところは、他の大長編と一味違う見せ方だが、途中から月並みになってくる。色々新しいことを試してはいるが、ちょっと雑な気がしないでもない。
のび太と夢幻三剣士 ★★1/2 実にがっかりした一本。毎度舞台となる空間を変えてきた大長編だったが、今度は何と舞台を夢の中に設定。挑戦的なようで、堕落的にも見える。危険になれば目が覚めて助かるなんて、ちっともスリルがない。ストーリーも子供だましで付き合いきれない。15分の短編を強引に長尺にしたような感じ。ドラえもんの衣裳も毎回楽しみだけど、これじゃ「魔界大冒険」と同じじゃないか。
のび太の創世日記 ★★★★ 先生が以前短編で書いた「創世日記」ののび太版である。のび太がそもそも造物主になって、地球を見守る様子はなかなかの見応え。実に野心的でアイデアも斬新。手塚治虫に一歩近づいた作品だ。それにしても先生のSF短編は素晴らしい。
のび太と銀河超特急 ★★★ 音楽にメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」を使っているところが見事。パッと見「銀河鉄道999」や「ウエストワールド」を思わせる。遊園地で遊ぶ様子は、夢心地風に描いていながらも、現実的な皮肉もある。のび太のガンさばきはやっぱりかっちょええ。
のび太のねじ巻き都市冒険記 ★★★1/2 藤子・F・不二雄先生最後の作品。全作品中もっとも神秘的な内容である。不死身の巨人も登場。実はこれが地球の創造主で、のび太だけがただ一人神とのコンタクトに成功する。
のび太の南海大冒険
のび太の宇宙漂流記
のび太の太陽王伝説
のび太と翼の勇者たち
のび太とロボット王国 - 忙しいので、見てない。スマンです。
のび太とふしぎ風使い ★★★
ややスラップスティック化し、今の子供向けの作風にしたため人気が高いが、昔からのドラえもんファンにしてみれば、見れば見るほどにあざとい作品。しずかちゃんの動きがやけにブリッコぽかったり、スネ夫もジャイアンの動きもふざけすぎ。ストーリーも説得力不足で、強引な感じがする。藤子先生が生きていたならば、動きに無駄のないもっと洗練された作品になったことだろう。「大長編ドラえもん」の中でももっともクサイ一本。

のび太のワンニャン時空伝 ★★★★ 別ページに特集→レビュー
ぼく桃太郎なんなのさ
2112年ドラえもん誕生
帰ってきたドラえもん
のび太の結婚前夜
おばあちゃんの思い出 ★★★ 同時上映の中編ドラえもん映画。力のいれ具合はだいぶ大長編に劣るが、ファンには涙もののたまらない作品ばかり。「帰ってきたドラえもん」は色々と物議を醸した最終回問題にとどめをさした一作。
 

大長編に欠かせない秘密道具Top10
タケコプター 大長編で必ず出てくる道具。「ドラえもん」は、登場人物が空を飛べることで、ストーリーの空想を無限大に広げている。大長編ではいつも電池が切れてピンチになる。
どこでもドア 移動用の道具。なぜかしずちゃんのお風呂場へ行ってしまうのが玉にきず。
移動用といえば、閉じこめられたときの命綱「通りぬけフープ」も大長編では大活躍する。
スモールライト 大きな道具を小さくして隠したり、自分を小さくしておもちゃで遊んだり、用途は様々だが、大長編ではときとして強力な武器として使われることがある。
大長編では「ビッグライト」も活躍する。
空気砲 ドラえもんが持っている武器ではこれが最強。戦闘機だって打ち落とせるほどの威力はあるのだが、ドラえもんはもともと戦闘用ロボットではないため、大長編では戦闘もずいぶんと不利になる。不利だからこそ面白い。
武器といえば他にも「ショックガン」、「瞬間接着銃」などがある。
ヒラリマント 最強の防御用道具。稲妻でも電波でも何でも跳ね返す。
防御用では他に、敵に気付かれなくなる「石ころぼうし」などがある。
桃太郎印きびだんご 動物にこれを食べさせたらアッという間にお友達になる。猛獣に襲われそうになったときに役立つ心強い道具だ。
タイムふろしき 壊れたものは、これを使えば壊れる前の状態に戻せる。ものに限らず生き物に使ってもOK。とても便利なのだが、大長編では忘れられがち。これをむやみに使ってしまっては、ストーリーが面白くなくなるからだろう。
ほんやくコンニャク 言葉の通じない外国人でも原始人でも宇宙人でも、これを食べればコンタクト可能だ。地味な道具だが、出現頻度は高い。
テキオー灯 あまり知られていない道具だが、4つの大長編で使われている。この光を浴びると、海の中や宇宙空間でも普通に息できるようになる。
グルメテーブルかけ 食べたいものを何でも出すことができる凄い道具。これだけあれば食い物には何も困らないはずだが、こればっかでは芸がないので、大長編では他にも色々な食品道具が登場する。
 

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