映画の中のモード (特別企画)

企画7
映画の中のモード

 映画は総合芸術であり、映画と他の芸術とは切っても切り離せない関係にある。絵画もそうであり、音楽もそうであり、そして服飾もそうである。
 今回の<秘密映写室>では、服飾の世界に焦点を当て、モードの頂点にたった人物たちが映画とどのような関わりを持ったのかを調べてみた。
ココ・シャネル
 
ココ・シャネルは、間違いなく今世紀最大の、永遠不滅のファッション・デザイナーである。服飾界の新技術を数多く確立させた20世紀モードの先駆者であり、いまだに若いデザイナーの卵たちから崇拝されているカリスマ的存在である。
映画スターたちにもシャネル・ファンは多く、中でも香水「シャネルの5番」はマリリン・モンローが愛用していたことで知られている。フランスの巨匠ジャン・ルノワールとの交友も深く、彼の最高傑作「ゲームの規則」では衣裳デザインを担当した。
エルザ・
スキャパレリ

服飾を芸術として捉えたスキャパレリは、「ショッキング・ピンク」というスタイルで一世を風靡し、30年代の映画衣裳に多大の影響を与えている。ハリウッドのスター、メイ・ウエストのボディをボトル・モチーフにした香水「ショッキング」など、とにかく驚かせるのが得意だった。
孫娘は女優のマリサ・ベレンソン。 クリスチャン・
ディオール

パリ・モードを世界に広めて、モード王と呼ばれたスター・デザイナー、クリスチャン・ディオールは、意外にも映画衣裳に大きな関心を抱いていたという。有名どころでは「舞台恐怖症」のマレーネ・ディートリヒ、「終着駅」のジェニファー・ジョーンズの衣裳などを担当している。
ユベール・
ジヴァンシー

ジヴァンシーといえば、オードリー・ヘプバーンである。ジヴァンシーはオードリーの存在そのものをモードにしたといっていい。オードリーの人気の隠し味はジヴァンシーだったのだ。 ピエール・カルダン

あらゆる意味で創作的だったイタリア生まれのフランスのデザイナー、ピエール・カルダンは、ビートルズのあの襟なしのジャケットで名高い。映画ではジャン・コクトーの「美女と野獣」や、ジャンヌ・モローの「黒衣の花嫁」などを手掛けた。
ジョルジオ・アルマーニ

男の背広に色気をもたらし、ジャケット王と呼ばれたジョルジョ・アルマーニの衣裳は、さすがにハリウッドのダンディ・スターたちからの人気が高い。「アメリカン・ジゴロ」のリチャード・ギア、「アンタッチャブル」のケビン・コスナーはラフなようで気品があり、まさにセクシーだった。ミラノでのショーは、コレクション最大の楽しみである。  ジャン・ポール・ゴルチエ

現在最も人気のあるデザイナーといっても過言ではないゴルチエは、映画の衣裳デザイナーとしても実力を発揮している。「キカ」、「フィフス・エレメント」は映画の内容以上に彼のアバンギャルドなファッションが話題になった。

ハリウッドで最も優れた衣裳デザイナー
イディス・ヘッド 映画業界の衣裳デザイナーで、こいつはスゴイといいたくなる人物が一人いる。イディス・ヘッドである。ジーン・ハーロー、マレーネ・ディートリヒ、ベティ・デイビス、グレース・ケリー、イングリッド・バーグマン、オードリー・ヘプバーンの衣裳をデザインした彼女は商業デザインには全く手を出さず、あくまでスタジオの衣裳係りから脱さぬまま、黙々と活動を続けた。手掛けた映画の本数は数え切れず、アカデミー賞ノミネート回数は歴代第2位の35回(受賞は8回)の快挙である。「あくまで自分の個性は出さずに女優の美しさを引き出したい」とは彼女の言葉。

ハリウッドで最も偉大なメイクアップ・アーチスト
マックス・ファクター この人がいなかったら、ハリウッド映画はあそこまで華やかにはならなかっただろう。彼は映画界最高の裏方スターだったに違いない。どうして映画の女優たちがああも美しいのか。それは全てマックス・ファクターの天才的才能の成せるワザだったのだ。彼は自分で発明したファンデーションを使って独自のメイクアップを施し、数え切れない人数の役者たちをスターらしい顔へと生まれ変わらせた。ファクターのお陰で、女優たちは自信を持ってクロースアップを許せたのだ。
 

- 紳士はメガネがお好き - 僕はメガネをかけた女性がタイプなので、町に出てもついメガネの女性に目が動いていってしまうのだけど、意外にも映画にはメガネをかけたヒロインはほとんど登場していないようだ。
 映画の人名事典をゆっくり見ても、メガネをかけた女優の写真は2枚しか見つからなかった。こりゃどういうことだろう?
 モノクロ時代のマレーネ・ディートリヒもキャロル・ロンバードも、一世代昔のナタリー・ウッドもフェイ・ダナウェイも、今を代表するジュリア・ロバーツもジョディ・フォスターも、とにかく美人女優といえる女優はみんな、メガネをかけても似合いそうな気がするんだけどね。
 というか、メガネをかけると何だか落ち着いたイメージがして、別の魅力が発見できたりする。
 男性スターもメガネをはめたら違ったかっこよさを見せることもある。
 メガネを好んでかけているスターはオシャレさんだと思うし、僕はメガネこそ顔を飾るため(あるいは変身させるため)のハイ・ファッションだと思っている。
 とはいいつつ、僕は視力が1.5なので、メガネはかけないけどね。
 

君も立派にスター気分を満喫してるんだぜ

誰もが子供の頃から、自分を着飾ることにこだわっていたかもしれないね。僕は子供の頃、よく段ボールで鎧を作って、それを着て英雄ごっこしてたよ。こういうごっこ遊びって、結局スターの気分になることなんだよね。
大人になると、ごっこ遊びはしなくなるけど、オシャレするようになるね。これが言ってみれば、ごっこなのかもしれないね。初めてスーツを着てビシッと決めたときには、自分が凄く偉くなった気がして、あの娘もこれでイチコロなんて思っちゃったりしたものだけど、実際衣裳が替わると本当に性格も変わっちゃってるんだよね。スーツ着ると妙に背筋がシャキッとしちゃうだろ。たぶんスターたちが衣裳に身を包んで演技するときに味わう気分というのは、これに近いものだと思うな。スターがどれだけゴージャスな服を着ても、僕らがオシャレする気持ちと何等変わりないんだよね。服っていうのは、僕らをスターにしてるんだぜ。
参考文献:人物20世紀(講談社)

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