石黒賢

『ジャイブ　海風に吹かれて』石黒賢インタビュー

6月6日（土）より『ジャイブ　海風に吹かれて』（モントリオール国際映画祭2008招待作品）が公開となる。日差しを浴びてさまざまな表示を織りなすオホーツク海、水面を滑るヨット、大規模な空撮による迫力映像など、魅力溢れる海と人間描いた作品である。このほど、主演の石黒賢さんが単独インタビューに応じた。

--ヨットに乗ったときはどういう気分でしたか。

「そうですね。ヨット自体今回の映画でやるまでは経験がなかったものですから、ヨット指導の先生に操船の仕方を教えていただきました。撮影時は、天候が非常に目まぐるしく変わり、その天候の中で撮れるものを撮るというフレキシブルな撮影スタイルでした。晴れて、いい風が吹いているときは、疾走しているシーン。数分後に、空が真っ暗になって雨が降れば、嵐のシーン。物凄い波に揺られ、転覆しそうな状態になっていたこともありましたが、操船にまだ慣れておらず、その時は気がつきませんでした。ラッシュを見ると、もう倒れる寸前。迫力があって、いい画が撮れたと思います。凪（なぎ）という風が吹いていない状態では、撮影もできず、ヨットに関しては、そういった半分ドキュメンタリータッチのような撮影でしたね」

--操船は楽しい作業でしたか。

「バイクやスキーなどと一緒で、風を肌で感じながら疾走するスピード感というのは楽しいですね。エンジンを使わず、自分の力と風だけで、コースも自分で決められる。テクニックが伴えばですが（笑）。基本的には風に向ってしか進めないのですが、うまくなってくると、追い風でも行きたいところに行けるようになったりするんです。僕はそんなにうまく風をつかまえられなかったので、風上へ風上へと進んで行く感じでした。全部自分でコントロールできるところが楽しいんですよ」

--サトウトシキ監督の演出はいかがでしたか？

「サトウさんは、物凄く役者の芝居というものを本当によく見て下さる方。一瞬の揺らぎも見逃さない、すごくきめこまやかな演出をしてくださいました。ヨットに関しては、本当に撮れるものを撮るという感じでしたが、陸に上がってからのシーンは、時間的にもゆとりがあり、芝居をみんなで構築していく作業時間がとれました。ですから、リハーサルを入念に繰り返して本番に望む感じでした」

--ロケで楽しかったことは？

「それは食べ物がおいしかったことですね。俺は魚が好きですから。そのときちょうどイカのシーズンで、特に美味でした。ロケ弁にまでイカ刺しが入っているというのは初めてでした（笑）」

--松山千春さんのテーマ曲の印象はどうでしたか？

「『ジャイブ』の撮影後、松山さん原作の『旅立ち〜足寄より〜』という映画に出させていただいたこともあり、勝手に松山さんに縁があると思っています（笑）。秋に国際フォーラムでのライブを観に行かせていただいた際は、『ジャイブ』の主題歌の『ため息をつかせてよ』をアンコールで歌ってくれたんです。そんなこともあって益々松山千春ファンになりました。」

--演技の秘訣を教えてください。普段心掛けていることとか。

「それはシンプルであることとユーモア。どんな役をやるにおいても、このふたつは大事にしたいなと思っています。シリアスな役でもユーモアの気概をもって望みたいですし、それでいて、なるべく演技はシンプルに。色んな余計な装飾物は削いでやっていきたいと思います」

--今回の役にはどのように臨みましたか？

「今回は、江差で育った男のスケール感とか、素朴な感じとか、どういう風に表現したらいいのかというのを常に考えていました。また、この作品は一人でヨットに乗っているシーンが多いんですよね。相手がいれば相手とのキャッチボールで芝居を作っていけるのですが、一人だと自分の芝居の温度設定、どこに基本のトーンをおいて上げ下げするか、そういうことを、監督とディスカッションしながらやっていきました」