劔岳 点の記

浅野忠信、香川照之『劔岳 点の記』完成披露試写会開催

6月1日(月)、東京国際フォーラムにて、『劔岳 点の記』の記者会見と完成披露試写会が行われ、浅野忠信、香川照之、松田龍平、仲村トオル、小澤征悦、宮崎あおい(完成披露のみ)、木村大作監督が登壇した。

『劔岳 点の記』は、明治40年、測量手・柴崎芳太郎と案内人・宇治長次郎の姿を通して、日本地図完成という使命を果たすため、不屈の闘志で険しい山中27カ所に三角点を設置した明治人の高潔な生き様を描いた感動の実話。『八甲田山』の撮影監督、木村大作が長い映画人生においてここに初めて監督を務めた。

文字通り、劔のようにそびえ立つ劔岳は、かつて前人未踏の「死の山」といわれてきたが、木村組は、映画の撮影のためにこの山を二度も登ったという。部屋も風呂も共同、食べ物は自炊。山に何日も籠もった。雨が降ろうが風が吹こうが、普通なら撮影中止となる状況でも木村監督はお構いなしに撮影を敢行。映画の8割は山のシーンである。CGは一切使っていない。実際にその現場にその足で行って本物を撮っているからこそ、その過酷さ、大自然の迫力が伝わってくるものになっている。恐らく日本一過酷であろうこの撮影現場で、木村監督は何度も無茶を要求し、出演者達は語れば一週間かかるというほど危険な目にあったという。それも今では良い思い出として残っているという。

この日の記者会見は、監督のカリスマ性がよく伝わってくる会見となった。監督はとにかく声が大きい。記者たちもその声の大きさに思わずびっくりしたほど。しかし監督はとてもおもしろい人で、ひとつひとつの発言に会場一同が爆笑していた。監督はみんなをわざと笑わせているのか、それとも元々からこういう変わった人なのか、いずれにせよ威勢の良い人で、現場がどんな雰囲気だったのか、だいたい想像がついてしまうほどわかりやすい人だった。

会見では、浅野は「9時間歩いてきて、この画は使えないからって撮影しなかったり、本当に大変だった。現場では毎日同じ弁当を食べていたのですが、これが初めて食べる弁当じゃないかってくらい毎日美味しかったです」とコメント。香川は「本当に伝説の案内人をやらせていただいたのですが、木村監督はそこを案内したらベストガイドじゃないだろうっていう危ない道ばかり行かせるんです。もっと安全な道を歩けるはずなのに、もっと端に立ってくれって言われて。そりゃ端には行けますけど、すぐ下は断崖絶壁ですよ。もう少し俳優の気持ちになって欲しかった」と語り、現場の厳しさが伝わってくるようだった。仲村は「雨が降っても登った。自分の顎からしたたっているのは自分の汗なのか雨なのか涙なのかわからないくらいの状況で登っていまして、そのときは先に山に入っていた香川君に頼まれた高級赤ワインをリュックの中に入れていたので、この道を歩くのを知っていてあいつは俺に頼んだのかと、20年来の友情関係にヒビが入りそうになった」と冗談交じりに話していたが、木村監督は「100年前は柴崎芳太郎と宇治長治郎が実際に27カ所行ってるんです。彼らに負けるわけにはいけない。この映画の目的は、目的の場所に行くことです。撮影なんて考えるな。我々は22カ所行ってますが、もう一年色々やってれば、あと5カ所も行けただろうなあ」と全く懲りていない様子。浅野は「22カ所といっても、掛ける2回は行ってますから」と苦笑いしていた。

浅野と香川は撮影中、寝食を共にし、仕事のことからプライベートのことまで何でも話して、裸で語り合える仲になったという。香川は「こんなに頼れる後輩はいない。現場で横顔とか見てると浅野さんから武士を感じる。いつも刀を持っている人だなと。僕らは必ず浅野さんを先頭にして歩いた。この組は、素晴らしい主役を持ったなと思っていた。風呂も一緒で、お互いにこんなに見せられる現場はない。このキャスティングをしてくださった木村監督に感謝しています。ぜひ次回、刑事物で、ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズみたいな役で共演したい」と話していた。

木村監督はこれが最初で最後、一本だけの映画ということだが、このことについて質問があると、「たった一度の映画で始まったし、年齢も年齢だし、そういう覚悟でやっていました。しかし、47都道府県キャンペーンを回っていて、見た方の感想を読んでいるうちに、人間って弱いんですね、なんか欲が出てきてですね、もう一本くらい良いかなあと思っている昨今です。でも生涯一本だけというのもかっこいいなあと思うし。今年はギャラで食えますが来年は食えないし、もう一本くらいいいか。宮崎駿さんは引退するといって何本も撮ってますよね。そういう前例もあるし。・・・しゃべり出したら止まらないんだよね。あまり喋らないように気を遣ってるつもりなんだけど」と、やっぱり懲りていない。仲村は「監督はこの映画撮ったら死にますねとか言ってましたが、南極の映画を撮りたいと言っているのが聞こえてきたときには口を塞ぎたくなった」と言って記者達を笑わせていた。

場所は変わって、完成披露試写会の会場で一行は宮崎あおいと合流。男だらけの映画の中で彼女はただひとりの女性キャストである。この日は、通常の外国映画の舞台挨拶よりも沢山のマスコミが集まっていたが、ほとんどがあおいちゃん目当てだったので、やっとお出ましかとばかりにバシャバシャ写真を撮りまくっていた。木村監督のことを「すごく優しくて、カメラをのぞいている横顔がかっこよくて、今でも忘れられない」と話していたが、木村監督はそれを聞いてデレデレ。「宮崎さんは人の話を聞くときにじーっとつぶらな瞳で見るんですよ。なんせ年がだいぶ離れているんで、その目で見られるとドキドキしちゃうんで、あまり見つめないで下さいと言った覚えがあります」と鼻の下を伸ばしていた。浅野いわく、監督は普段は髭ぼうぼうなのに、宮崎あおいの撮影シーンのときだけ髭を剃っていたそうだ。

『劔岳 点の記』は6月20日(土)全国ロードショー。

画像をクリックすると拡大表示します(撮影:澤田)
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