スター・トレック

『スター・トレック』ジャパンプレミア。歌舞伎町にエンタープライズが着陸

5月12日(火)、新宿にて『スター・トレック』のジャパンプレミアが開催された。監督のJ・J・エイブラムスはじめ、主演のクリス・パイン、ザッカリー・クイントらが来日、登壇した。

ジャパンプレミアにも色々あるけど、今回のプレミアはかなり成功した部類だったと言って良い。通常ジャパンプレミアといったら、一直線に伸びるレッドカーペットが神々しい雰囲気を与える東京国際フォーラムか、またはスケールの大きさと豪華さで圧倒する六本木ヒルズアリーナか、あるいは東京ドームやその他スタジアムか。通常は大きな場所で行われるものであるが、今回選ばれた場所は何と新宿の歓楽街、歌舞伎町である。かなり稀なことである(報道陣の連中も、長い待ち時間はゲームして遊んで待っていたほど)。海外からの注目度も高く、珍しく外国人記者も多く参席していた。会場はスペース的に狭苦しかったのは仕方がないとしても、広場が大量のスモークに包まれて何も見えなくなったかと思ったら、巨大なUSSエンタープライズが歌舞伎町の上空に忽然と姿を現し、来日スターがあたかもエンタープライズから降りてきたかのような錯覚を与えるその演出の感動といったら、他のジャパンプレミアでは味わえない格別のものがあった。集まった映画ファンたちもそのファンタスティックなひとときを満喫していたようだった。

著名人ゲストも桁違いに凄かった。通常著名人ゲストといったら5・6人程度日本の役者や文化人が参加するだけというのがほとんどだが、今回の著名人といったら、まるで映画祭に来たかのような豪華さであった。眞鍋かをり、吉川ひなのの他、マジシャンのセロや、ロックバンドのX JAPAN(TOSHIとHEATHが出てきたときは、はっきりいって来日スターよりも歓声が大きかったぞ)も映画を見にやってきた。そしてなんと、あのチャン・ツィイーもわざわざ来てくれたのだからびっくりである。ジャパンプレミアにも色々あるけど、外国のトップ映画スターがこうして出席した例など、かつてあっただろうか。ツィイーの登場はマスコミにも知らされていなかった予期せぬサプライズだったので、報道席のカメラマンたちもかなり焦ったものである。そして、アメリカからパラマウント社の会長兼CEOであるブラッド・グレイも直々に参加しレッドカーペットを歩いた。すげえよボス。太っ腹だよ。このプレミアも会長が「ほれ」と軽くポンとお金を出してやったのかな?なんて考えてしまった。会長はまさに富豪といわんばかりのたたずまいだった。

新宿ミラノもこの日のために相当気合いを入れて入念に準備していたようで、映画館のホワイエはまるで宇宙船のコックピット風にアレンジされていた。お客さんはまるで宇宙空間に入っていくような気分で映画館に「乗り込んでいく」ことになり、ワクワク感を大いに刺激させられたに違いない。本格的だなぁ。やるからにはここまでやらなくちゃね。新宿ミラノ1はスクリーンも大きく、ステージの適度な高さも写真に収まりがよく、俄然評価が上がったに違いない。

司会は予想通りクリス・ペプラー。ジャパンプレミアの司会と言えばこの人である。ペプラーの紹介でJ・J・エイブラムス監督が登壇すると、監督が自ら出演者を紹介する形で舞台挨拶は進められた。監督が中央に立ち、主導権を握ることはかなり珍しい話で、この日のトップスターは、紛れもなく出演者ではなくエイブラムス監督だった。

エイブラムス監督は「東京は僕が世界で一番好きな町なんだ。その中でも新宿は不夜城と聞いているから、この素晴らしい町でこのようなイベントができたことを嬉しく思っています」と挨拶。リップサービスだったのか本心なのか。すごく笑顔が素敵な監督なので、もうどっちでもいい!

この日は中山弘子新宿区長が監督に花束を贈った。区長が舞台挨拶に出てくるという展開もかなり稀なケース。パラマウントと新宿、お互いの協力があって成し得たビッグイベントだったのだと思われる。区長は「監督の映画は大好きです。次回作はぜひ新宿を舞台に作ってください」と町の活性化をアピールしていた。エイブラムス監督は何とAKB48の大ファンだそうで、本当に日本がお気に入りみたいだから、もしかしたらもしかするかもよ。

この日登壇した出演者は、カーク役のクリス・パイン、スポック役のザッカリー・クイント。悪役ネロ役のエリック・バナ、カークの友人マッコイ役のカール・アーバン、スールー役のジョン・チョウの5人。これだけが一堂に会するのは壮観である。映画ファンの間ではビッグスター級の扱いといえるエリック・バナも軽く普通に参加しているところに驚く。

クリス・パインは「ニッポンサイコー!」と片言の日本語で挨拶。これを受けたカール・アーバンは、メモ用紙を取り出すなり、「私の知ってる日本語で挨拶します」と流ちょうな日本語で挨拶し、大喝采を受けていた。クリス・ペプラーから「日本に住んでいたんじゃないかというくらいうまいですね」と褒められたカールは「以前『ロード・オブ・ザ・リング』という”小さい映画”で日本に来たことがあったからね」と得意げに語っていたが、ペプラーから「知らない映画だなあ」と言われてブチキレ、ふざけて司会席のペプラーのところまで猛突進し、観客を大いに笑わせてくれた。

また、エリック・バナも「また日本に来れて光栄です」と日本語で挨拶した後、英語で「実はカールが言った日本語は全部僕がいうつもりだったのですが、先に言われてしまいましたね」と軽く小ネタで挨拶。今回は悪役ということで特殊メイクした役を演じているが「実はこの顔も特殊メイクです」といっておどけていた。

スポック役のザッカリー・クイントは、『HEROES』で有名になった俳優。この日の前日に実は日本で行われていた『HEROES シーズン3』のジャパンプレミアには出席していないけど、『スター・トレック』のプレミアにはちゃんと参加してくれた。彼自身、この役には特別な思い入れがあるという。テレビシリーズ『スター・トレック』でスポックを演じていたレナード・ニモイとの共演も果たし、「レナードは友人でもあるが、尊敬している。一緒に日本に来て欲しかった」と話していた。

韓国生まれのジョン・チョウは、映画の中で大迫力の白兵戦を見せてくれる。ジョン・チョウのフェンシング・シーンはこの映画の最も大きな見せ場のひとつと言えるだろう。ジョンは「僕は映画みたいに危険な男じゃないから安心して抱きしめてください」とコメントしていた。

ジャパンプレミアには出席していないが、この映画には、他にゾーイ・サルダナ(2月に本作のPRで来日している)、サイモン・ペッグ、ウィノナ・ライダーら豪華キャストが出演している。

ちなみに、この映画には、ある約束事がある。パラマウントからも何度も念を押されていることだが、これは旧シリーズとは全く異なるリ・イマジネーション作品ということだから、『スター・トレック11』などという表記は使ってくれるなとのことである。カークは今回船長ではないので「カーク船長」という表記もNG。「乗組員」は「クルー」、「エンタープライズ号」は「USSエンタープライズ」の表記とせよとのこと。ここら辺は、誰がどう書こうがその人個人の自由だと思うので、こだわりすぎるのはどうかとは思うけど、旧作とどうしても差別化していきたいということらしい。といっても、シリーズを知っている人も、知らない人も楽しめる壮大なSFスペクタクル映画になっているので、お客さんの自由な視点で楽しんでもらいたいところだ。

『スター・トレック』は5月29日(金)より丸の内ルーブル他全国ロードショー。

フォトアーカイブ(撮影:澤田)
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