完成披露試写会

西原理恵子原作の映画『女の子ものがたり』完成! 深津絵里ほか、女優たちの存在感が光る1本

4月23日(木)、汐留で行われた『女の子ものがたり』(作品詳細はこちら)の完成披露試写会に行ってきた。この映画、ちょっと楽しみにしていた映画である。原作は5月に博覧会を開催するなど今年は乗りに乗っている西原理恵子。映画も他に『いけちゃんとぼく』がひかえており、まさにサイバライヤーといえる年になりそうである。監督は森岡利行。女優の魅力を引き出せる監督である。『子猫の涙』は個人的にど真ん中の映画だった。この監督はもっともっと評価されてもいいと思う。

そしてそして深津絵里の初取材。僕がこの仕事をはじめてからずっとずっと僕の中で「最も取材したい女優さん」のナンバー1の座に君臨していた人だ。やっと念願叶ったというわけ(写真を撮っただけですが)。この仕事してて良かったぁ。

そして忘れてならないのが大後寿々花。僕が最も応援している女優である。去年『遠くの空に消えた』で彼女を取材したとき、僕は初めて女優の内なるオーラをこの目で見た。同年代の他の女性有名人とは明らかに路線が違っているし、この子は絶対大女優になると確信した。まだまだ若い。将来が楽しみでならない。あれからテレビCMなどで彼女の活躍を見るにつけ「やっとるわい」と僕はいつもガッツポーズを取っている。ほんと、まじで期待してますよ大後さん!

場面写真1

僕なりの映画の感想だが、かなりよくできた映画だと思う。完成度は極めて高い。映像の瑞々しさ、余韻の残る深みのあるストーリー。欠点が見当たらない。一番感心したのはやはり女優たち。大後寿々花、あんたやっぱスゲエよ。その存在感に圧倒されっぱなし。主演の深津絵里も『博士の愛した数式』とまでとは言わないが、これも別の意味で魅力的だった。なんというか、家でだらだらソファで昼寝をするあたり、そのだらしのなさに妙に親近感が沸く(ま、僕も家では実際こんなもんですから)。どっちかというとイケてない女性を演じているわけだが、そのくせかなり部屋の装飾センスが良く、服装に可愛げがある。編集者と先生、同じ屋根の下に男と女。男は指一本触れないけれども、なんだか妙に胸がキュンとする。これが『(ハル)』の深津マジック。そして特筆すべきは森迫永依ちゃん。ニッコリ笑ったときの表情が忘れられない。天才子役とはこのことか。深津、大後、森迫、その他、この映画に出て来る女優たちは、皆生き生きしていて、素晴らしいの一語に尽きる。映画を役者で選ぶとすれば、これ以上の映画はないだろう。

場面写真2

しかし、タイトルがそのまま『女の子ものがたり』なので、主要人物3人の考え方と行動に、どうしても男の僕には理解しがたいところがあった。これが女の性ってものなのだろうか。まだ『いけちゃんとぼく』の方が同じ男として理解できた。『女の子ものがたり』では、女の子の素顔の世界を初めてかいまみたような気がした。ちょっと手で触れたらたちまち砕け散ってしまいそうな、ある種、近寄りがたいものさえ感じた。これが映画のパワーなのか。堂々たるこの映画タイトルに恥じない内容だと思う。

場面写真3

同じ様な映画で、主役が男の映画なら知っている。僕はこれを見たとき、一番に『スタンド・バイ・ミー』を思い出したものだが、どうやら製作者側も女性版『スタンド・バイ・ミー』を目指していたそうで、なるほど道理でそんな気がしたわけである。しかし、強烈なボディブローを喰らったような、これほどズシリとくる女性映画を見たのは初めてだ。深い。深すぎる。いや、しかしここはあまり深く考えない方がいいのかもしれない。赤・青・黄色、オーガニックな色合い。この瑞々しい光景のひとつひとつを直感で見るのが正解なのかもしれない。好きか嫌いかは別問題。これがタダモノの映画ではないことは確かである。ある日突然また見たくなるような、そんな映画だ。

タイムカプセル

完成披露試写会では、深津絵里、大後寿々花、福士誠治、波瑠、高山侑子、森岡利行監督、そして原作の西原理恵子が登壇した。映画の中でタイムカプセルが出て来ることにちなんで、この日は登壇者が記者の前で、子供の頃の夢を紙に書いてタイムカプセルに詰めることになった。大後は「バレリーナになりたい」ととても女の子らしい夢を書いたのに対し、深津は「とにかく大人になりたい」と、あまりにもアバウトな願い事に会場は大爆笑だった。西原先生はズバリ「絵かきさん」。この中で子供の頃の夢を実際に叶えたのは西原先生だけだった。成功の秘訣は「プライドがなかったこと。安いギャラで三流誌のエロ本からスタートしたのがよかった」と語っていた。監督は「赤塚不二夫みたいな漫画家」を目指していたそうだが、親に「好きなことをやって食べていけるわけないだろ」と怒られて諦めたという。ちなみに、波瑠は「イルカの調教師」、高山は「ペットショップの店員」、福士は「野球選手」と書いていた。このタイムカプセルは各上映映画館に順次展示される。

女の子について描いた『女の子ものがたり』、男の子について描いた『いけちゃんとぼく』。どちらか1本を見れば、きっと、もう1本も見たくなるはず。今、まさに西原ブーム。この流行に乗らない手はない。『女の子ものがたり』は夏の終わり頃、渋谷シネクイント、シネカノン有楽町ほか全国ロードショー(配給:IMJエンタテインメント、エイベックス・エンタテインメント)。

女優たち(澤田写す)
深津絵里 大後寿々花 波瑠 高山侑子

(C)2009西原理恵子・小学館/「女の子ものがたり」製作委員会