BABY BABY BABY!

観月ありさが妊婦役を大熱演!
『BABY BABY BABY!』で出産を疑似体験

どうも。シネマガ編集長の澤田です。4月16日に行われた『BABY BABY BABY!』(作品詳細はこちら)の記者会見と舞台挨拶付き試写会を取材してきまして、映画も拝見したのですが、とっても良い映画だったので、ここで大きく取り上げたくなりました。この映画、ホントにスゲエぞ・・・。ひょっとしたら今年一番の傑作候補かもしれません。シネマガのイチオシです!

『BABY BABY BABY!』は日本初の「出産エンタテインメント」。大ヒット連続ドラマシリーズ『ナースのお仕事』のキャスト・スタッフが6年ぶりに再集結して作り上げた映画です。ほぼ『ナースのお仕事』と同じキャスティングなので、これはファンとしてはかなり嬉しいのでは?

メガホンを取ったのは、もちろん両沢和幸監督です。両沢監督って、ビリー・ワイルダー系の監督さんなんですね。台本がうまいから、そこに自然と演出が付随してくるという感じで、とにかくストーリーの妙味に感嘆させられました。軽く笑い飛ばした些細なギャグも、よくよく考えてみると結構奥の深い一言だったりします。

産婦人科に行く男と女

「出産」っていったら、映画の世界でもとくに珍しいテーマでもなかったのですが、「出産」というただそのテーマだけで1本のコメディ映画を作りあげたのは、日本では恐らくこれが初めて。「出産」というテーマはとっても斬新ですし、それでいて物凄く身近なテーマですから、この点でも女性への訴求力は抜群ではないかと。とはいっても、男なら「なんだぁ。出産だぁ?」と、はなから見ようと思わないかもしれません。男なら、ちょっと見に行くのは勇気がいるかも。だってポスターもあからさまにピンク色ですから。主演の観月ありささんは「出産といいますと、男性が見づらいという感覚がありますが、本当に笑えて楽しい映画になっています」とアピールしていましたが、たしかに男性が見てもこの映画は面白いと思います。むしろ僕は男性が見るべき映画だと思いました。

話は飛びますが、僕は『それでもボクはやってない』を見たとき、「裁判」というテーマだけでここまでストーリーを膨らましてドラマチックに描けるものかと感心したものでした。そのとき受けたものと同じ様な感動を僕は『BABY BABY BABY!』を見たときにも感じたのです。つまり、「出産」というテーマひとつでこんなにも楽しく愉快でハッピーな映画ができてしまうのかという驚きです。ストーリーも、さあ子供ができちゃったぞ、というところで、ぐだぐだ悩むシーンが描かれるのかと思いきや、あっさりと「皆さん、僕たちに子供ができました」とバラす展開に持って行った監督のこの潔さ。余計なドラマの部分はそぎ落として、あくまで「出産」というプロセスに的を絞り込んで、そこに肉付けしていった手腕が素晴らしいです。

『それでもボクはやってない』は入念にリサーチして組み立てられた渾身の力作という感じでしたが、『BABY』はひたすら明るいエンターテイメント仕立て。「楽しんで作っちゃいました」といった感じです。軽いノリで、ポンと傑作が生まれたような、そんな映画なんですよ。松下由樹さんは「気心の知れたスタッフ・キャストと映画が作れて光栄」と話していましたが、『ナースのお仕事』であれだけ一緒にやってきた間柄ですから、そんな開放感が映画の中にも感じられました。

そういえば、ハリウッドには『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』という出産についてのコメディ映画がありました。『無ケーカク』も『BABY』も、おおかた登場人物の立ち位置的なものは共通していますが、『BABY』は『無ケーカク』以上に出産というテーマに密着したものになっていますね。『無ケーカク』がいかにもアメリカらしい構成だとするなら、『BABY』は「これぞまさに日本のエンターテイメント映画」といったところで、日本人ならではのユーモアがたっぷりと詰まっていて、映画館ではお客さんがゲラゲラ声を出して笑っていました。日本人として、日本語のコメディ映画が字幕なしで楽しめることの幸福感を、僕はこの映画で改めて噛みしめることができました。

観月ありさと松下由樹

一番の見どころは、登場人物の多彩さ。4人目の子供を産むというベテランもいれば、17歳で妊娠した人もいる。産むことを躊躇する人もいれば、不妊に悩む人もいる。谷原章介さんは「それぞれの登場人物に監督は心情を託している」と説明していました。人それぞれに生き方があって、十人十色の考えがあるわけで、それぞれの思いが、多彩な登場人物の一人一人に託されているわけです。だから面白い。すんなり共感できるキャラクターもいれば、自分とは違うけれども「なるほど、こういう考えも確かにあるよな」と、他人の気持ちまでも納得できる。さらに、これだけ多彩な登場人物たちが、気持ちいいほど見事に絡み合う(変な意味じゃないよ)わけですから、これは群像劇のお手本ともいえる内容ですよ。登場人物に悪い人がいないところもポイントが高いですね。作品に不幸要素の入る余地なし。皆さん、ひたすらに純粋で、幸福感満開の映画になっています。

後から後から出て来る男性陣のキャラクターも皆独特で、好感度が高いのですが、僕は男なので、どうしても彼ら男性側の視点から見てしまいました。男達も一人一人、それぞれに考えがあって、その辺の心情がこの映画では良く描かれていると思いました。野波麻帆さんは「女の人の強さというのを男性にもわかっていただけたら」と言っていましたが、ホント、女は大変ですね。男達はただ見ているだけしかないんですから。じゃあ男は、どういう形で女を見守っていけばいいのか、そしてこんな時どんな気持ちになるのか、見守る側としての出産という一大イベントを疑似体験することができます。

両沢監督は「出産というものを疑似体験していただきたくてこの映画を作りました」と語っていましたが、この映画では、妊娠したことのない女優たちが妊婦を演じ、子供がいる女優たちが妊娠経験のない女性を演じており、観客に出産を疑似体験をさせるために、女優たちに出産を疑似体験をさせたところに監督のセンスが光っています。独身で子供もいないこの僕でも作品に感動できた最たる理由はそこでしょう。3回出産を経験している斉藤由貴さんが「出産は奇跡のような幸せ」と言っていましたが、その意味がこの映画を通してストレートに伝わってきました。子供が生まれることって、まさに奇跡、最高にハッピーなことなんですね。

「これを観ればあなたもきっと子供が生みたくなる」というのが東映さんの謳い文句ですが、その言葉に偽りなしです。伊藤かずえさんは舞台挨拶で「7歳の娘と一緒に見たら、娘がママ子供産んでと言ったので、第二子が欲しくなりまして、今がんばっている最中です。42歳という年齢もありますが、まだまだ諦めずにがんばっていこうかなという勇気をもらいました」と言ってましたが、すでにここで一人の子供が誕生するきっかけになっているわけですから、映画の力ってすごいですね。神田うのさんも「将来的には出産したいと思っていましたが、やっぱり恐怖心があって敬遠していたものでした。でも一観客としてこの映画を拝見して、勇気と希望をいただきました」と話していました。

山本ひかるさんは、「10代の妊婦ということで、最初浮かれ気味だったんですけど、お腹が大きくなるにつれて、命の大切さとか、自分の責任感とか、そういうのを持つという気持ちでこの役をやらせていただきました。母に私を出産したときの体験を聞いたのですが、3時間の陣痛と破水、帝王切開と、死ぬような思いだったと言ってたんですけど、私を産むときの喜びは人生最高だったと言われました。そのことを頭に入れて演じました。母親に感謝したいです」と、最年少ながらも、しっかりした挨拶をしてくれました。僕もこの映画を見て、実家の両親に感謝したくなりましたし、両親と一緒にまたこれを見たくなったくらいです。

舞台挨拶には、メインキャストの他に、少子化対策担当大臣の小渕優子さんがスペシャルゲストとして登壇しました。小渕さんも半年後に第二子を出産する妊婦さんです。小渕さんは、この映画が、現代の少子化問題に貢献してくれることを期待していました。

この物語の主人公

最後に、主演の観月ありささんについて書かせてもらいます。僕はこの映画を見て一気に観月さんのファンになりました。人気があるのもうなずけました。何か身近なものを感じる人で、美人ですが「こんな俺でも彼氏になれるかも」と、どことなくそんなスキを感じさせる。まあ、こんなこと書くと観月さんに失礼ですけど、でも、そこが男性の目にはとても魅力的に映りますね。僕はこれを「マリリン・モンローの法則」と勝手に呼んでます。観月さんはこの映画で強がってる女性の役を演じていますが、谷原さん演じるパパにお腹を撫でられるシーンでは、思わず顔がほころびます。このときの笑顔が最高に可愛いくて、見ているこっちまで幸せ心地になってきました。今まで知らなかったけど、実は僕と同い年(現在32歳)だったんですね。ますます共感! 今日から僕は好きな芸能人は誰って聞かれたら絶対観月ありさって言おう(笑)僕が言いたいのは、そのくらいこの映画の観月さんが素敵だったってことです。(2009/3/16)

クリックすると拡大表示します。(撮影・澤田)
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『BABY BABY BABY!』は東映の配給で、5月23日(土)より全国ロードショー。(場面写真:(C)2009「BABY BABY BABY!」製作委員会)