第16夜『デス・レース』

テレビゲーム映画といえばポール・W・S・アンダーソン

『デス・レース』DVDジャケット

(長らくこのコーナーを休止していたので、復活させます。初心に戻ってズバズバとSF映画を紹介していきたいと思います)

これはロジャー・コーマンのB級映画究極系ともいえる『デス・レース2000年』のリメイク映画。リメイクとはいえ、これもコーマン印なので本物だ。元映画のようなアブナイネタは抑えられているが、グロいシーンは結構見られる。『バンク・ジョブ』のジェイソン・ステイサムが主演。『バイオハザード』のポール・W・S・アンダーソンが監督を務める。

アンダーソン監督は、ゲーム系の映画監督としては恐らくこの業界では唯一人信頼できる人物なのではないだろうか。「ゲーム系の映画は当たらない」というジンクスがある中、彼だけがヒット作を多数放っている。その監督が手掛けるのだから、これが面白くないわけがないっ! てなわけで、やっぱりゲーム心に溢れた傑作アクションに仕上がっていました。

この映画、時代設定を解説したオープニングの序文からして魅力的で、SFオタク野郎の男なら、ここで拳を思わずグッと握って熱くなるに違いない? 何でも、この世界では、犯罪者が多すぎるせいか刑務所が民営化しちゃって、囚人たちに命懸けのレースをやらせて、視聴率をあげて大もうけしようじゃないかって、そんな世界。まるで『バトルランナー』だなこりゃ。僕は小学の頃『バトルランナー』には相当入れ込んだクチなので、この内容には久々に燃えた。出来栄えでいえば『バトルランナー』よりこっちの方がうまい。

この手の「死のレース」的なゲームというものは、たいてい「ルールはない」というのが多いけど、『デス・レース』にはちゃんとルールがあって、僕はそこが気に入った。相手の車に発砲できるのはコースの「攻撃マーク」を踏んだときだけ。相手の攻撃はコースの「防御マーク」を踏むことで防ぐことができる。最初のラップは攻撃ができない。レースは3日に分けて行われる。こりゃ『マリオカート』だな。こういう風にしっかりルールが決められている方が、かえって映画として面白いことは言うまでもないだろう。

3日間レースがあるのがミソ。ステージクリアしたら次のステップへ。1日目、2日目、3日目でレースの描き方はまったく違うし、レースの合間にレーサーたちのドラマ、サスペンスもたっぷりと描かれている。1日目は当たり前にレースして、2日目に主人公はついにルールをぶちやぶる(ここからはノンストップで面白くなる!)。そして3日目に大団円でめでたしと。男として、この展開は実に気持ちが良かった。映画ならではの醍醐味が詰まった脚本だと思う。

『ボーン・スプレマシー』のジョアン・アレンの悪女ぶりもうまい。少年漫画を読んで育った男性諸君のマゾっ気を開眼させてくれるなぁ。でも不満点もある。できれば大型車が大破したときも彼女にニンマリしてもらいたかった。あそこで視聴率も上がっただろうから。レーサーの視点のシーンが多かったせいか、どうも番組で中継している感じがあまり出ていなかったから、もうちょっと視聴者サイドの視点からも描いてもらいたかった。まあ、結末がいいから、そんな不満も最後には吹き飛んだけどね。

ジェイソン・ステイサムは男から見てもかっちょいいし、刑務所なのにムチムチバディのギャルが視聴率アップのために登場したりするところなど、娯楽要素の詰まった、久しぶりにヒーロー物ではない本物の男の映画を見たという気になった。まるで日本の少年コミックスを読んでるような、そんな興奮のある痛快作だった。(2009/3/30・澤田)

発売日:4月24日(金)
【セルBlu-ray】「デス・レース」4,935円(税込)
【セルDVD】「デス・レース エクステンデッド・バージョン」 3,990円(税込)
発売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント

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