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要潤

『パラレル』要潤さん インタビュー

北京パラリンピックの日本選手団主将を務めた、車椅子バスケットボール日本代表・京谷和幸選手の感動の実話を映画化した『パラレル』が3月14日(土)より公開される。公開を前に、京谷選手を演じる要潤さんに話を伺った。

--この作品に出演したきっかけと、役作りで心がけたことについて教えて下さい。

「これは実話なんですけど、京谷さんの人生にすごく魅力を感じまして、車椅子バスケにも興味があったので出演しました。役作りについては、事故にあって、医師からサッカーができないと告げられる挫折感、悲しみ、僕はそれをどうやって表現するかに重点を置いたので、色々と京谷さんに話を聞いて、自分の思う悲しみと京谷さんの思う悲しみをリンクさせて表現するようにしました。車椅子バスケに関しては、技術的なことはとてもじゃないですけど、プロの人には追い付けないので、絵に映ってリアルに見えるように練習して、自分では満足できる結果になりました。」

--撮影は何日間くらいあったのですか?

「2・3週間はあったんじゃないんですかね。話が来てから撮影までは1ヵ月くらい。その間に車椅子バスケの練習をしました。脚本は、京谷さんを取材した上で作られていたので、実際に京谷さんとお会いしまして、よりイメージに近づけるように話をいっぱい聞きました。このとき、京谷さんが挫折して誰にも慰めの言葉をかけてもらいたくなかったというぐらい辛かったとおっしゃっていたのが印象的でした。」

--撮影していて自分でこういうところはこうしたらいいんじゃないかと提案したことはありましたか?

「今回に関してはあまり無かったですね。自分が車椅子バスケをやっていく上で、車椅子に乗っている人達の所作が微妙で難しかったので、そこに専念していました。」

--撮影中足を動かしてしまったことはありましたか?

「ありましたね。病室で島谷さんともみくしゃになって倒れるところでは、3・4回NGを出してしまいました。スポーツタイプの車椅子に関しては足を縛っているのでほとんど動くことはないです。演技をしていないときは車椅子の練習をしていました。車椅子を傾けて片輪でこぐとか、回転したり、ジャンプしたり。みんなそういうことをするので、僕もやりたくて。実際に試合をやってるときには手の皮がむけました。あんなにハードなスポーツを毎日やっている皆さんはやっぱりすごいです。」

--自分が車椅子で生活することになったら何をしてると思いますか?

「車椅子バスケをやっていると思います。健常者の人も車椅子バスケの練習に来てたりしたんですけど、今なお僕も車椅子バスケをしたいくらい、魅力的なスポーツでした。」

--撮影中に一番思い出に残ってることは?

「バスケをやってるとき、チームメイトの皆さんとひとつになれたことです。多分監督は僕の車椅子の出来が良いと判断されまして、一番最後のバスケのシーンで、実際に試合をしているところを、ずっとカメラを回しっぱなしでやったんですね。みんな気を遣ってくれたと思うんですけど、うまく試合を運べたときは一番嬉しかったですね。
あとは、島谷さんのお芝居が素晴らしかったこと。京谷さんご夫妻と同じ空気感を作るように、島谷さんと二人で話し合って役作りをしました。」

--この映画を通じて人生観など変わりましたか?

「変わりました。普段身近にいない方たちと接する機会が多かったので、始めに自分の中では途惑いがあって、どうやって車椅子に乗ってる人達と接すればいいのかと考えてたんですけど、それを考えてること自体が恥ずかしかったというか。皆さんはむしろ僕よりも明るくて、バスケをやってるときは敵わないなあという部分も多かったです。自分の中の価値観がひとつ増えました。」

--話は変わりますが、好きな映画俳優と映画を教えて下さい。

「ヨーロッパですが、僕はジュード・ロウが好きです。スマートなところが、なんかこう気になるんですよね。芝居ももちろん好きだし、顔も好きなんですけど。好きな映画はいっぱいありますけど、『クローサー』のジュード・ロウは素晴らしかったですね。あとは『アルフィー』も好きです。是枝監督の作品も全般的に好きで、一番最初に『ワンダフルライフ』を見たときは、素敵だなと思いました。」

--今後やってみたい役はありますか?

「どんな役でもやってみたいですね。役ってめぐり合わせなんで、この役をやりたいと思ってくるわけではないので。オファーが来れば受けます。」

--この映画をどういう人に見てもらいたいですか?

「皆さんに見てもらいたいですが、支えあう愛の形がはっきり出てるので、特に夫婦、恋人同士で見てもらいたいです。」

--撮影が終わったとき、どんな気分でした?

「とても良い映画だったなと、温かい気持ちになりました。辛いこともあったんですけど、幸せなシーンで終わったので、報われたというか。バスケも相当練習してきつかったですけど、やり終えて良かったです。すがすがしかったですね。」

パラレル
(C)2009『パラレル』フィルムパートナーズ

『パラレル』はギャンビットの配給で、3月14日(土)よりシネマート新宿、4月4日(土)よりワーナー・マイカル・シネマズ茨木 他にて全国順次ロードショー。

(2009/2/21 構成・澤田)