『斬〜KILL〜』初日舞台挨拶

押井守のチャンバラ映画『斬〜KILL〜』公開

12月6日(土)渋谷シネクイントにて、『斬〜KILL〜』の初日舞台挨拶が行われた。登壇者は総監修の押井守監督と、辻本貴則監督、深作健太監督、田原実監督、主演の森田彩華、藤田陽子だ。イベントには押井ファンが多く集まった。

『斬~KILL~』は4人の監督がチャンバラを題材に描くオムニバス。ただし時代劇ではない。現代のアクション映画にチャンバラを持って来たらどうなるか、その化学反応を見る映画となっている。

押井監督は、この作品を企画したいきさつとして「チャンバラは海外に持って行かれて、日本では絶滅しかけているジャンル。絶滅しかけているからこそ自分が作る。映画を作るということは、映画を発明することとほぼイコール。もうすでにかたまっているジャンルの中で何を表現するかということじゃなくて、新しいジャンルで物を作ることから始めないと日本で活力のある映画を作ることは不可能」と語る。「多分この映画の真価が問われるのは5年後10年後だろう。たとえ辻本君や田原君が監督として失敗して故郷に帰っても、この映画の価値は微塵も減ることはない」

オムニバスというものは、「けっ、オムニバスかよ」と、何かとコケにされがちなジャンルだが、これはこのジャンルとしてはかなり傑作の部類だと言える。低予算の限られた制約の中、アイデアの切り口だけで大胆に勝負しているところを高く評価したい。深作監督が「オムニバスは監督同士がライバルでありチーム」といっているように、4作いずれも好き放題やりながらも、他者に負けず劣らずの映画に仕上がっており、オムニバスとしての調和が保たれている。

1作目「キリコ」(辻本貴則監督)は、『キル・ビル』なんぞに負けてたまるかと、とことんチャンバラを見せまくって客を引きつける作品。日本刀のひとふりひとふりに込められたギミックが見させる。昔子供の頃にみた特撮番組を彷彿とさせ、セーラー服に日本刀という組み合わせがオタク心をくすぐってやまない。辻本監督がいうには、森田は木刀を持ち帰って自主練したそうだ。

2作目「こども侍」(深作健太監督)は息抜きのコメディ映画。現代の学校を舞台にしながら、明治の日本を見るかのよう。モノクロのサイレント形式で、山崎バニラの活弁付きという斬新さ。深作監督がいうには「録音するお金がなかったから活弁にした」とのことだが、これが功を奏している。カメラワークも凝りに凝り、小学生が主役なのに、血しぶき満載、ド迫力のチャンバラシーンが待っている。

3作目「妖刀射程」(田原実監督)は、勢いと刺激と緊張感に満ちたクライマックスパート。アクションシーンのかっこよさにはもう惚れ惚れ。刀と銃を融合させた発想には度胆を抜かれることだろう。

4作目「ASSAULT GIRL 2」(押井守監督)は、お待ちかねの作品。押井監督は同作について「白と黒、天使と堕天使のファンタジー」と語る。セリフは一切無く、圧倒的なビジュアルだけで見せ切る映像詩だ。さすが巨匠、余韻の残るエンディングで締めくくっている。

斬~KILL~』は、12月6日(土)より渋谷シネクイントにて公開中。13日(土)には山崎バニラの生の活弁付き上映、20日(土)には押井守監督、菊地凛子、MELLの対談付き上映を予定している。(2008/12/7 文・写真:澤田)

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