100年前のクラシック映画から映画史を読み解く


ミュージック・ビデオ (フィルムロジック)


Lesson 16
ミュージック・ビデオ

 ミュージック・ビデオはテレビドラマよりももっと映画的であり、映画よりも映像を重視しているエンターテイメントである。マイケル・ジャクソンの「スリラー」から、ミュージック・ビデオのスタイルはかなり豊富になってきた。
 3年前(ちょうどthe brilliant greenが売れ始めた頃)、僕はミュージック・ビデオに熱中していて、暇があればスペースシャワーTVとMTV(ロゴ映像がたまらん)を見ていた(どちらかというと邦楽クリップの方が好きだった)。そして、見たクリップについての感想と自分なりの見どころを必ず書いて一冊の本(250ページ)にしたことがある。
 今回の<フィルムロジック>は番外編として、3年前に書いた本を1ページにまとめたものである。
クリップのキーワード コメントと代表的アーチスト
舞台装置 ミュージック・ビデオで一番面白いところは舞台装置である。毎度意表を突いたセットを、空間の構造を実に見事に利用して上手く撮影している。僕がとくに気に入っているのはLUNA SEAのきらびやかな「Shine」のセットである。この他、Puffyの遠近法を生かした「愛のしるし」のセット、GLAYの未来的な「誘惑」のセット、JUDY AND MARYのファンタジックな「クラシック」のセットなど、映画ではなかなか出せない非現実的セットがクリップでは楽しめる。
ざらつき ミュージック・ビデオの特徴として、わざと映像を汚す傾向がある。8mmフィルムで撮影してざらざら感を出したり、ピンボケで撮ったり、やり方は様々だ。Airの「Hair Do」、サニーデイ・サービスの「さよなら!街の恋人たち」、黒沢健一の「Rock’n Roll」、Charaの「タイムマシーン」などはざらつきをうまく利用したクリップである。
スタイリッシュ おしゃれ、ファッショナブルという表現はミュージック・ビデオにはぴったり。MAXの「Ride on time」、T.M.Revolutionの「HIGH PRESSURE」などは、ノリノリで、映像的にもかなりかっこよく演出してある。
雑 とにかく適当に片付けたという感じの雑なクリップをたまに見ることがあるが、そういうクリップの方がかえって荒々しくて迫力があったりする。ズボンズの「Bomb the Bomb」はまさにそれ。たしかリアプロジェクションの映像だったと思うが、気迫たっぷりだった。
モノクロ カラーかモノクロかで映像の雰囲気もずいぶんと違ってくる。モノクロにしただけて平凡な映像にも生命の息吹がふきこまれることもある。それだけモノクロの映像の説得力は大きい。エレファント・カシマシの「悲しみの果て」、BLANKEY JET CITYの「悪いひとたち」等はモノクロの特性を理解した映像である。
カラー ミュージック・クリップはカラフルな映像もくすんだ映像も印象的である。こういう色遣いを見るだけでも楽しい。bonnie pinkの「Forget Me Not」やスーパーカーの「cream soda」はMTVを意識した色遣いだが、ポップな色彩感がなかなかよかった。
コラージュ GREAT3の「CALiGULA」は、実に不思議なハードロックの名曲だ。60年代のイメージが出ているのだが、クリップも当時の音楽傾向を意識したイラストコラージュみたいなものになっている。
街 ミュージシャンが街を歩き、食堂や公演に行く、というような内容は、けっこう使われる手である。B’zの「love me, I love you」、SOPHIAのその名も「街」はその好例だろう。
シンプル 飾り気なしのクリップでも、カメラワークしだいで、かなり臨場感たっぷりな映像になったりする。ローリング・ストーンズ(洋楽)の「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」はシンプルながらも凄まじい迫力だ。これは僕にとってミュージック・ビデオの最高傑作だと思っている。
字幕 字幕を効果的に使うのもテクニック。Pizzicato Fiveの「モナムール東京」の字幕はかなり大胆である。画面の中央にでかでかとタイムコードを表示させてしまった。
ドラマ クリップそのものをひとつの短編物語にしてしまうのもなかなか面白い。TUBEの「きっとどこかで」とホフディランの「欲望」は歌っている横でドラマが展開するという変わり種である。
表情 じっと表情を捉え続けたクリップもある。斉藤和義の「歌うたいのバラッド」は無表情の顔がいい。カレーを食べている表情もたまらん。山崎まさよしの「月明かりに照らされて」の汗が飛び散るエネルギッシュな表情もいい。
美女 「女神達への情歌」のビデオを発表したサザンオールスターズは、もはや美女の映像がシンボル記号みたいになってきた。サザンオールスターズのクリップには何かと美女が登場する。
アート いかにアーティスティックな映像にするかは、ミュージック・ビデオ作家の悩むところだろう。カヒミ・カリィの「TINY KING KONG」のセットはコントラストが強烈で、かなりユニークだった。
スローモーション ルールがなく、何をやっても許されるミュージック・ビデオ。全編をスローモーションにすることで、ムードアップするのは、よくある手。ただし石野卓球の「Polynasia」はスローモーションを利用して他とはまったく異なる効果を醸し出した。ある一家がガス爆発する過程をスローで捉えているのだが、まるでバーチャルリアリティを体感しているようだった。
プロモ ミュージック・ビデオはあくまでプロモーション・ビデオだという考えを持つ人も少なくはない。Speedの「Wake Me Up!」は、その系統のビデオとしては、歌・ダンス・映像の三拍子揃った傑作である。
ライブ感 テレビなのにまるでライブハウスにいるような感覚の映像もある。thee michelle gun elephantの「OUT BLUES」や、THE HIGH-LOWSの「ミサイルマン」などは荒々しいほど生の熱気が伝わってくる。
フィルタ ミュージック・ビデオはひょっとしたら劇場用映画よりもCGを頻繁に利用しているかもしれない。普通の映像でさえ、わざわざ加工して、雰囲気を盛り上げている。スピッツの「スピカ」はバンドメンバーからオーラが放たれているような演出が施されていて、とても珍しい。THE YELLOW MONKEYの「離れるな」では舞台全体に宇宙空間が広がっており、シンプルなセットながらもトリップ感漂う壮大なイメージが膨む。
マルチスクリーン ウルフルズの「サンキュー・フォー・ザ・ミュージック」には心底感動した。トータス松本自らが絵コンテを描いた傑作クリップだ。バンドメンバーの演奏している様子を直接撮影、それをダイナミックにマルチスクリーンで表現し、シンプルかつパワフルで斬新な映像に仕上げている。マルチスクリーンといえば、Every Little Thingの「出逢った頃のように」もそうだった。
大掛かり ミュージック・ビデオは、たかが5分のために、かなり金を使っている。黒夢などのビデオ映像を手掛けた丹修一氏のビデオは特に大掛かりで、映像的にもクオリティが高く、内容もアバンギャルドで斬新なものが多い。
hideの「ピンクスパイダー」、L’Arc~en~Cielの「虹」、MY LITTLE LOVERの「private eyes」、globeの4枚連発シングルCDシリーズ、Coccoの「Raining」などはMTVの作りを意識した、いかにもミュージック・ビデオらしい映像集大成といえる。
98年に書いた本からの抜粋だから、かなり懐かしかったっすね。ちなみに、取り上げたクリップは、あくまで映像を重視して選んだものなので、僕の音楽の趣味とは何も関係はありません。
・・・よく考えたら、うちのサイトを見ているお客さんが邦楽に興味があるわけないか。「歌はやっぱり洋楽」という人は、僕の洋楽サイトの方をどうぞ。

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