日本のアニメ (フィルムロジック)


Lesson 14
日本のアニメ

 今回お勉強するのはアニメの演出である。昨日僕は久しぶりにテレビアニメを見て、そのカメラワーク、カッティングのテクニックの巧さに唸った。今まで気付かなかったが、日本のアニメというのは、ハリウッドのブロックバスター映画及びヨーロッパの非営利目的の実験映画にかなり似ていることがわかった。アニメゆえにできた自由なカメラワークも多数見受けられ、サイレント時代の手法もアニメでは健在である。アニメの凄いところは、それだけの演出をしておきながら、実に自然であり、限りなく洗練されていて、わざとらしさがまるでないことである。CMを含む30分の放送時間で(帯アニメは決まって30分番組)、それだけ濃く見せられるのは恐るべきことである。ひょっとしたら映画を見るよりも学ぶことが多いかもしれない。今回は日本アニメについて、撮影と編集を中心にざっと分析してみることにする。
動き回るカメラ
 ドラマ色の強いアニメのカメラにはあまり動きがないが、アクション系のアニメやSF色の強いアニメの場合は、かなりカメラが動きまわる。そしてショットの時間がとても短く、ショット自体のつながりがユニークである。
2人の人物が会話する場面を例にとってみると、

(1)人物Aと人物Bを斜め上から捉えたエスタブリッシング・ショット、右にパンしている
(2)人物Aの斜め下からのローアングルのバスト・ショット、斜め上にティルトアップしている
(3)人物Bの斜め下からのローアングルのバスト・ショット、斜め上にティルトアップしている
(4)人物Aの横顔のクロースアップ、右にパンしている
(5)空を飛ぶ鳥のインサート・カット、ハレーション効果が生かされている
(6)人物Aと人物Bの肩なめショット、人物Aにズーム・アップする

という具合にいくつもの短いショットを滑らかに繋げて見せていることがわかる。
日本のアニメは、フェーディング効果、スローモーション効果、ロール撮影、クレーンショットもどきなどもスムーズに行われている。アニメのカットはまるでカットと気付かせない優れモノなのだ。
映画的なアングル

[ 俯瞰 ]
クレーンで撮ったような映像 [ あおり ]
天井が背景になっている [ 低いポジション ]
右側に写っているのは人の足 [ 傾斜フレーム ]
画面がまるごと傾いている
斬新なイメージ

かつてエイゼンシュタインがこういう構図を撮ったことがある。アニメにはフォーカスがないため、このような構図でもくっきりと見せられる。実写では表現が困難な構図である。
マルチスクリーンやダブルイメージなどでコラージュ的に見せるやり方。実写ではあまりこういった描き方はしないが、アニメではさりげなく描かれる。 ヒーローの背後に飛びかかる魔の手。実写にはほぼ不可能な構図である。手がピンボケというところも面白い。ヒッチコック的構図だ。
表現主義的な感情表現

普通の実写映画にはできない表現である。背景は抽象化され、イメージが感情を表現する。 
目がハートになったり、顔が湯だったり、鼻水がぷくっと膨らんだりするアニメ独特のシンボル的表現。
「ハッ」と敵の存在に気付いたときの目つき。その瞬間を強調させるため、マスクが貼られる。
顔自体がデフォルメ化されて、感情が視覚化されたもの。ギャグ・アニメによく見られる特徴だ。アニメタイトルは写真をポイントすれば表示されます。機会があれば、コマーシャル、ミュージックビデオ、テレビドラマなども今後取り上げてみたいと思っています。
 

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