第12夜『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』
最初から最後まで至れり尽くせりのシリーズ最高傑作!
『スター・ウォーズ』シリーズの2作目。1作目に劣らぬ大傑作で、ファンの間では最高傑作との呼び声が高い作品である。(作品クレジットはこちら)
1作目はキャラクター、セット、音楽、効果音、ストーリー、すべてが新鮮で、ただただ驚きの連続だったので、これと同じものを見せようとしたところで1作目に勝てるわけがなく、そこで2作目は違う方向から映画をもりあげようと工夫に工夫を重ねている様子がよく伝わって来る。もっともっとストーリーを壮大なものに膨らまし、己の心の中の「暗黒面」と対決するという精神哲学的な要素を加えて入った。思い切ってルークとダース・ベイダーが親子という設定にしたのも大きな挑戦だったろう。
1作目の砂の惑星があまりにも印象的だったので、2作目はこれに負けないもっと惑星を増やして、雪の惑星、雲の惑星、沼の惑星など、特徴的なユニークな惑星を追加して世界観を広げていった。
キャラクターの関係も1作目とは違ってあべこべに組み合わせている。1作目の3-CPO&R2-D2の凸凹コンビは、2作目では3-CPOとチューバッカに役割交替。3-CPOの動きは1作目以上に人間臭くて、顔の表情はずっと同じなのに、動きだけで、表情まで違って見えてくる。チューバッカもすごく可愛くなった。1作目では狂暴なイメージだったが、2作目では、じゃれる犬のイメージ。鳴き声も可愛いし、見れば見るほどいとおしくなる。スクラップ場でC-3POの残骸を見つけたときのチューバッカの表情ときたらもう可愛いのなんのって。2人のやりとりがシリアスなこの大河ドラマに愉快な笑いを与えている。
ファルコン号の動きも明らかにパワーアップした。1作目ではまっすぐに飛ぶしかなかった機体が、2作目では360度ぐるりぐるりと縦横無尽に飛び回る。狭い場所をすいすいすいとくぐりぬけていくところが爽快でクールである。
キャラクターも更に増えるが、ヨーダが2作目で初登場。喋るたびに耳がぷるぷる揺れ動くところがすごく良い感じ。肌の質感、柔らかさ、暖かさ、このマペット技術は、僕が知る限りその技術の最高水準に達したものである。本当に生きているようで、僕に言わせればヨーダの表現手段でこれ以上の物はない。新三部作でヨーダが3DCGとなって出て来たときには中が空洞のようで、本当にがっかりさせられたものだ。
前半のシーンでの象型メカのストップモーションアニメーションも特筆に値する。CGでは出せない圧倒的な重量感で迫って来る。特殊メイク技術、描き割り、マペット技術、ストップモーション技術など、当時のアナログ技術の最高のものがこれでもかと凝縮されたもの、それが『帝国の逆襲』なのだと言わせる。
音楽のジョン・ウィリアムズの功績も大きい。1作目のテーマ曲の衝撃には適わないかもしれないが、それに匹敵する印象的な新しいテーマ曲を作曲してくれた。ダース・ベイダーが出て来るシーンで流れるこのテーマ曲は今では携帯電話の着信メロディとしてすっかり定着している。
ストーリー面で、最も変わったと思うのが、1作目になかった恋愛ドラマの要素がたっぷりと加味されていることだ。子供の頃は嫌いな要素だったけれど、大人になった今見るとファルコン号の中でのハン・ソロとレイアの恋の行方はなかなかドキドキものである。ハン・ソロの動き方がジョン・ウェインみたいで渋い(パンツもジョン・ウェインみたいだしね)。偶然生まれた「わかってる」の名セリフ。当時の女の子たちがハン・ソロに熱をあげたのもよくわかる。ヒット映画の歴史を見てみると、恋愛の要素はまず絶対に欠かせない必須条件。2作目でその条件はやっと満たされたことになる。そのハン・ソロを映画の途中で大胆にも消してしまう展開も衝撃的である。
そして、ついにルークとダース・ベイダーの初対決。1作目では二人は戦っていないが、2作目でようやく剣を交えることになる。スモークの中で二人が激しくやりあうシーンは、ある意味崇高ささえあり、もうワクワクドキドキ。手首を切り落とされて、高いところから身を投じるヒーローなんて初めて見たよ。今見てもこのヒーロー像には「すげえ」と声がでてしまう。
もともと3作目を作ることを前提としての2作目なので、エンディングは中途半端なところで終わっているものの、そんな中途半端さもお構いなしに盛り沢山の面白い内容。ただただ素晴らしいの一言である。(2008/7/23)
ルーク役マーク・ハミル(左)とC-3PO役アンソニー・ダニエルズ(右)
写真は2008年7月19日「スター・ウォーズ セレブレーション・ジャパン」より撮影