第11夜『リロ&スティッチ』

ヘンテコでお下品なのにこれがなぜだか愛くるしい

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 2003年、これが初めて公開されたときには、僕はまだ作品を見たわけでもないのに、予告を見た印象だけで「ディズニー大丈夫か?」と思った。当時ディズニーのアニメはピクサー(後にディズニーの子会社になったけど当時はライバルだった)などのアニメに比べると、どうも負けている気がしていたので、ついにやけっぱちになったかと思ったのである。それまでのディズニーの映画とはまったく絵のタッチも違っていたし、パッと見て、あの青いヘンテコな怪物はお世辞にも可愛いと言えなかった。だから僕も当時は完全にノーマークだった。今ではあの当時の自分の鑑賞眼を恥じている。

 あれから5年、このスティッチという名のエイリアンの人気は物凄い勢いで急上昇して、今ではミッキーマウス、プーさんに次ぐ人気キャラにまで成長した。ディズニーストアでもスティッチグッズはまさに主力商品になったのである。

 映画も実際に見てみると、僕の期待を遥かに超える傑作だった。やっつけ仕事なんかじゃなくて、試行錯誤を重ねて生みだされたもので、今後のディズニーを背負う画期的新作であったことを映画を見て初めて思い知らされた。

 とにもかくにもスティッチが可愛い。歯が大きくて、腕が4本もあって、狂暴で何でも壊すし、平気でゲップをしたり、よだれもだらだらたらします。おまけに壁をクモみたいに歩く。こうして文章にすると相当下品なキャラだが、これが映像で見るとあら不思議、仕草がとっても愛くるしい究極のキャラクターに。いわゆる「キモ可愛い」とはこのこと。これほど強烈なキャラは、スティッチをおいて他にいないんじゃないか。子供たちに人気があるのもうなずける。

 ギャグのセンスも素晴らしい。大昔のカートゥーンに戻ったかのような、そんな印象さえある。今風の子供が喜びそうなちょっとお下品なギャグもあって、そうした数々のギャグがSFの世界とハワイアンの世界をミックスして展開されていくところが新鮮。映画を見終わった後、無性にハワイに行きたくなったりもする。

テレビシリーズも面白い。

 映画のヒットを受けて、その後も続編が作られたりTVシリーズ「リロ&スティッチ ザ・シリーズ」が放送されている。スティッチは試作品626号だが、それ以前にもジャンバ博士は625個の試作品を作っており、ハワイ中に散らばったその625個の試作品エイリアンを相手にリロとスティッチが大奮闘するのがTVシリーズ「リロ&スティッチ ザ・シリーズ」となる。

 ゲップをとまらなくするエイリアンや、相手の最も恐れているものに姿を変えるエイリアン、津波をおこすエイリアン等々、毎回毎回風変わりな能力を持つエイリアンが登場し、スティッチ相手に大乱闘するのがシリーズの楽しみ。散らばったエイリアンたちをひとつずつ回収していき、居場所のないエイリアンたちに最もふさわしいお家を探してあげること、それがリロの目的であり、このシリーズのテーマになっている。(2008/7/7)