ジョエル・マックリー

ジョエル・マックリー

No.344 Joel McCrea (1905-1990) US Actor

 ジョエル・マックリーは僕の大好きな俳優なんですが、テレビや雑誌などの「クラシック映画スター特集」では、まあ間違いなく無視されてしまうので、なんだかもったいないというかなんというか。ジョエル・マックリーは40年代では最も偉大なスターの一人なんですけど、クラシック映画ファンでも知ってる人が少ないのは残念であります。

 アメリカの映画のヒストリー関連書を見ると、必ず大きく取り上げられているプレストン・スタージェス監督が、日本の映画関連書では全くと言って無視されていて、名前すら載っていないことがあるんですよね。映画に詳しい熊本のとある喫茶店の店長が、この日米の評価の違いをこう分析しました。「ちょうど日本は戦時中だったからプレストン・スタージェスの映画が入ってこなかった。だから日本人はこの監督の存在を知らないんだよ」

 プレストン・スタージェスの代表作にはジョエル・マックリーがいました。『サリヴァンの旅』(41)などは今でも映画通の間ではかなり人気が高いクラシック映画です(実は週刊シネママガジンの開設当初は『サリヴァンの旅』のジョエル・マックリーの写真を長らくトップページで使わせてもらっていました)。

 30年代から40年代にかけて、その当時の巨匠の映画に数多く出演しています。プレストン・スタージェス、ハワード・ホークス、ウィリアム・ワイラー、キング・ヴィダー、セシル・B・デミル、フランク・ロイド、ラオール・ウォルシュ、そしてアルフレッド・ヒッチコック。『海外特派員』(40)のラストの演技は、ヒッチコック映画の中でも最も記憶に残る感動的な演技といえるものでした。

 西部劇にも多く出ました。ジョン・ウェインやゲーリー・クーパーとはまた違う、もうひとつのガンマンのイメージでした。中でも『死の谷』(49)は隠れた名作です。『昼下がりの決斗』(62)で久しぶりに西部劇に出演し「老ガンマン」の役を演じているのを見たときには感動しましたね。

 正義感にあふれるアメリカ人を演じたというところでも、僕はジョン・ウェイン、ゲーリー・クーパーに通じるものを感じます。僕にとってはウェインやクーパーと同等級の賛辞を捧げたい俳優です。(2008/6/15)