『美しすぎる母』トム・ケイリン監督来日記者会見の様子

ジュリアン・ムーア主演『美しすぎる母』
トム・ケイリン監督来日記者会見レポート

トム・ケイリン監督

 4月18日、『美しすぎる母』のトム・ケイリン監督とケイティ・ルーメル・プロデューサーが来日。渋谷Bunkamuraにて記者会見が行われた。

 『美しすぎる母』は息子が母親を殺す実際に起きた事件を描いた作品で、ジュリアン・ムーアが主演。上流階級社会を退廃的なムードで描いたタッチは、ルキノ・ヴィスコンティに匹敵すると賞賛され、カンヌ映画祭その他各国の国際映画祭にも出品された作品だ。トム・ケイリン監督は92年に『恍惚』でデビューし、数々の栄誉ある賞を受賞したアメリカでは希有な存在の映画アーティストである。

 ケイリン監督は作品について「これは、真実がフィクションよりもショッキングだという良い例だ。それに加えて古典悲劇に通じるものをもった物語になっている。これは我々の生活で最も根本的な家族という関係の中で起きた悲劇だ。私はこの映画で愛の限界というものが何なのかを描くことに挑戦した」と語る。

 『美しすぎる母』には期待の若手俳優エディ・レッドメインがジュリアンの息子役を演じている。「2人は容姿が似ているが、演技のタイプは違っていた。ジュリアンは本能で動く人。自分と役の切り換えが瞬時にできる。エディはきっちりとリハーサルを行い、演技について分析を求めるタイプだ。2人が共演したときの化学反応には興味深いものがあった」と監督は2人の才能を讃えた。

ケイティ・ルーメル・プロデューサーとトム・ケイリン監督

 映画では1946年から1972年という長い時期が4か国を舞台に描かれている。撮影はすべてバルセロナで行われた。30年近い年月を描いていながら、美しくなると共に破滅的な道を辿るジュリアン・ムーアの演技は、彼女にとってこれまでで最高の演技といっても過言ではない。

 衣装にも注目。ジュリアンのシャネルの衣装は、この映画のためだけにカール・ラガーフェルドがデザインしたものである(現在はジュリアン自身の私物になっている)。監督は時代時代で、この母親の心情を、衣装の色で表現したと語る。あるときは強烈な赤、あるときは茶色。もともと美術を学んでいた監督は、色のひとつひとつにも意味があるといい、こうした色遣いによるストーリーペイントが自分の根本的なコンセプトになっているのだという。(2008/4/18)

『美しすぎる母』は5月下旬、Bunkamura ル・シネマほか全国順次ロードショー(配給:アスミック・エース)