クラーク・ゲーブル
No.339 Clark Gable (1901-1960) US Actor
今時「スター」なんて表現は古すぎて誰も使わないけど(あえてウチくらいなものか)、クラーク・ゲーブルはまさに「スター」という風格のスターだった。なんといっても代表作『風と共に去りぬ』(39)のイメージが強い。『風と共に去りぬ』はもともとクラーク・ゲーブルが主演することを想定して書かれたというのは有名な話で、ゲーブル=レット・バトラーと刷り込まれている人も多い。あの髪型と髭。テクニカラーによる鮮やかな肌の質感。なんか一般人離れした、ちょっと近寄りがたいイメージがあった。だからこそスターなんだろうけど。
そのイメージを壊して、一気に親近感を覚えたのが『或る夜の出来事』(34)。本当の代表作はこれだろう。これを超えるラブコメはおそらく他にないと思う。ラブコメのあらゆる伝説はこの映画から生まれた。今見てもこれは洗練されていて、古さを感じさせず、クラーク・ゲーブルの演技を見ているとニコニコしてしまう。ヒッチハイクのシーンのゲーブルが可愛すぎる。
『戦艦バウンティ号の叛乱』(35)も含めると、5年の間で彼が出た映画のうち、実に3本の映画がアカデミー賞最優秀作品賞を受賞しているのだから驚きだ。彼が「キング・オブ・ハリウッド」の異名を持つのもよくわかる。
老けると渋くなる俳優が多いが、ゲーブルの場合、老けてからは、渋いというよりは、お茶目な感じのおじさんになった。晩年も『先生のお気に入り』(58)など、得意のキャラクターをいかしたラブコメに出ている。
結婚生活についてはそれだけで一冊の本ができちゃいそう。淀川長治さんによるゲーブルの紹介文はとてもユーモラスなものだった。淀川さんはゲーブルの最初の妻が14歳年上で、次の妻もやっぱり年上だったから、こいつは大丈夫かと心配したが、3番目の妻のキャロル・ロンバードが年下だったので、ホッとひと安心したとのこと。結婚歴は5回だが、3番目のキャロルとは死別している。『荒馬と女』(61)に出た後に心臓発作で他界、キャロルの墓の隣に埋葬されていることから、キャロルが最愛の妻だったと言われている。
耳が大きいのが特徴で、よく映画のネタになった。中でも印象的なのはディズニーのアニメ『ダンボ』。「耳が大きいからって気にするな。クラーク・ゲーブルだって大きいだろ」と慰められるシーンがあり、微笑ましい。(2008/4/14)