プラネット・テラー

セクシー美女がマシンガンの義足。究極のエログロ映画?

デス・プルーフ
『プラネット・テラー』
2007年アメリカ
監督:ロバート・ロドリゲス
出演:ローズ・マッゴーワン、フレディ・ロドリゲス、ブルース・ウィリス
販売元:ジェネオン エンタテインメント

 クエンティン・タランティーノの『デス・プルーフ』と共に、グラインドハウス映画(60年代〜70年代にあった常識破りのアクション映画)を復活させるべく作られた作品。

 画面に傷を入れて、わざと汚くして、映画館で上映しすぎた感のある映像を演出。内容も、掃除が行き届いてなくて、いかにもシートに染みがついてそうな映画館で上映されてそうなホラー映画を想定。

 最初の場面で『チャームド』のローズ・マッゴーワンが登場。このダンスが最高にイイ感じで、大いに期待させられる。いいねえ。いいねえ。いい女だなあ。この手の映画に必要なものは、無駄にセクシーな女なのだと再確認。

 ジャンルはホラーだが、怖がらせるための映画じゃなく、悪趣味のものを見せてニンマリしてもらう一種のゲテモノ料理。よって、かなり気持ちが悪く、家にこのDVDが置いてあるというだけで友達に無言で退かれること請け合い。ロドリゲス、今回は遊びまくって、とにかく悪趣味なものを作ろうと工夫に工夫を重ねた様子。見せ方は基本的にゾンビ映画だが、そこをどうすれば最も趣味が悪いものができるか、あらゆる手段に出たようだ。カート・ラッセルの『遊星からの物体X』じゃないけど、全身が膿で腫れてただれおちる人間が出て来て自分の頭よりもでかいゲロの塊を吐いたり、人間様が次々と車に跳ねられて夜市で売ってあるような風線ヨーヨーが破裂するみたいにぐちゃっとなったり、無駄に露出度の高いマッゴーワンの片足がもげて、その脚にマシンガンをつけるところなど、究極のエログロに迫ってみたという感じ。マッゴーワンはいいね。テレビでは有名だけど映画としてはまだまだ二流という中途半端な位置にいるところが適役(この後ロドリゲスと婚約)。彼女が主演するなら『バーバレラ』も面白くなりそうだ。あと、今までどこにいってたんだといいたくなるマイケル・ビーンがこんなグロい映画に出てるってとこも昔とギャップがあって面白い。

 僕が一番気にいったのは、内蔵が破裂して死んだように見えるコックが、単にソーセージを握りしめて寝ていただけだったというシーン。内蔵みたいな汚いソーセージを食べるところがたまらんね。このコック、ゾンビに囲まれても究極の食材のことしか考えてないところが可愛い。

 でも面白かったのは『ノーカントリー』のジョシュ・ブローリンがゾンビ化するまでの前半だけ。後半からはテンポが悪くなり、だんだんとしつこくなってくる。B級映画のサックリ感がないね。点数をつけるなら『デス・プルーフ』の半分程度。

 ついさっきまで普通だった姉ちゃんがゾンビを前にして急にコマンドーばりに強くなる筋書きは、以前ウチのSF映画夜話で紹介した『ハウス・オブ・ザ・デッド』に同じだが、僕は『ハウス〜』の方が断然面白いと思った。『ハウス〜』は史上最低の映画なんていわれてるけど、『プラネット・テラー』は監督がロドリゲスだから皆面白いといってるだけじゃねえのかといちゃもんつけたくなったくらいだ。『エイリアン3』も当初はけなされていたけど、監督が有名になった途端に再評価された。名前の価値に踊らされているんじゃないか?

 本質的問題は、作り手が本気で作っているかどうか。ロドリゲスはB級を目指してB級を作ったから、ちょっと本気とは違う(製作費70億はかけすぎだろ)。本気の本気で一生懸命作ったのに報われずにB級映画になってしまった映画にはどうしたって敵わない。グラインドハウスの再現という企画は大変面白いし、意義のあるものだが、こういうものは狙ってやるものじゃなかったのかもしれない。

 皮肉ながら、企画目的とは裏腹に、ここには、才能はないけれどもひたすら自分の映画を作ってきた数々のB級映画監督に対して侮辱的なものさえ感じた。マッゴーワンが出てるからまだ見れるけど、そうでなきゃアウトですよ、これは。(2008/3/23)