プリズン・ブレイク

IQ200の天才が国家を相手に知恵比べする骨太サスペンス脱獄物

プリズン・ブレイク
『プリズン・ブレイク シーズン1』
Prison Break
出演:ドミニク・パーセル、ウェントワース・ミラー、ロバート・ネッパー
販売元:20世紀フォック・ホームエンターテイメント・ジャパン

 これは海外ドラマに疎い僕が本格的に海外ドラマに入れ込むきっかけとなったドラマである。

 僕が最も好きな映画のジャンルは脱走ものだ。このジャンルに失敗作を見たことがない。『プリズン・ブレイク』は脱走ものの決定版。実に脱走だけで20時間も見せてくれるんだからたまりませんなあ。

 死刑囚の兄を刑務所から脱走させるために、わざと強盗未遂を起こして刑務所の囚人になったIQ200のマイケル・スコフィールド(ウェントワース・ミラー)が、手抜かりのない天才的な計画で、まんまと刑務所を脱走するまでを描いたのがシーズン1。ひとつのシーズンで脱走というひとつの目的を見事完遂しているところが気持ちが良い。

 なんといっても見どころは主人公のこの天才ぶり。行き場の限られた刑務所で、差し迫る危機を得意の頭脳で解決していくところが痛快である。

 彼を取り巻く囚人たちも皆一癖ある魅力あふれるキャラばかり(お互いをあだ名で呼び合うところがgood)。成り行きで脱走計画のメンバーが決まり、数々のピンチを潜りぬけながら、着々と事を進めて行く。後半に行くにつれて、「いったいどうやって逃げるんだ」という興味はどんどん膨らんで行く。

 20時間もの脱走劇がどうしてこうも緊迫に満ちているのか。それは主人公がアメリカ国家を敵に回しているからである。刑務所の中と外、それぞれでサスペンスが同時進行する。どちらかと言えば外での出来事の方がショッキング。人を殺すことなど何とも思っちゃいない政府が相手である。一市民がどうこうあがいたところで、とても敵う相手ではない。だからこそ怖い。そこには他の映画にはない、これまでにない非道な世界が描かれる。僕はこのドラマを見ていて、「え!この人まで殺しちゃうの!ひでえ!」と何度思ったか。このドラマ、とにかく容赦しませんぜ。

 シーズン2も傑作。僕はシーズン1よりも刑務所を脱走したその後を描いたシーズン2の方が好きだ。逃げた囚人たちがそれぞれの目的を果たすため散り散りになるが、政府に1人また1人と殺されて行く。マイケルが、勝ち目のない政府を相手に知恵比べをし、いかにして勝利をつかむかがシーズン2の見どころだ。賢いけれど貧弱な弟と、腕っ節の強さでは誰にも負けない兄の連携プレーが面白い。登場人物それぞれがもう駄目だという限界まで追い詰められていくプロセスはこのドラマの真骨頂。悪役だった奴も政府の犠牲者となっていくあたり、毎度その展開には驚かされる。

 ちなみに、僕が見たのは日本語吹き替え版。声優の皆さんは登場人物のイメージぴったりでよくできた吹き替えだった。特にティーバッグ役の若本規夫さん(『サザエさん』のアナゴの声の人)の演技が面白くてかなり気に入った。もうこの声以外に考えられなくなったので、字幕では見れないかもね。(2008/3/13)