第6夜『レディ・イン・ザ・ウォーター』

駄作なんだけど、なぜだか不思議と好きになる映画

レディ・イン・ザ・ウォーター

 まず最初に言っておくと、これは大して面白い映画じゃない。話が子供騙しで、うまく行き過ぎてつまらない。でもこの映画には、ここにこうして取り上げるだけの、ちょっとした魅力がある。それは不思議なまでに清いハートを感じるということだ。僕はもうこれだけでも十分見た価値はあった。

 ポール・ジアマッティ演じる主人公はアパートの管理人である。自分で自分を古いタイプの人間といい、女の子は気軽に男の部屋に入っちゃいかんと思っている。彼はちょっと言語障害を持っていて、よくどもるのだが、そのどもり方が妙に可愛かったりする。

 この管理人の視点から見たアパートの住人たちが魅力的である。いつも馬鹿話をして盛り上がっているしょうもない若者たちや、体の右側だけをムキムキに鍛えている変な男や、クロスワードパズルが好きな黒人などがいて、彼らの人間模様がどことなくユーモラスに描かれている。

 やがて管理人の前に水の精霊がやってきて、管理人はこの精霊を無事に里に送り届けるために奮闘する。これが映画の大筋。

 精霊を助けるためのヒントがすべてアパートの中に隠されているという設定が、ご都合主義ながらも素敵じゃないか。近所のおばちゃんの何気ないおとぎ話が謎を解く鍵になるあたり、うまく行き過ぎだろという感じがするが、そこにあるなんかちょっと不思議な感覚のせいかあまり気にならない。その都合の良さは話が進むにつれてさらにエスカレート。次々と謎を筋書き通りの方法で解き明かしていき、黒人の青年が朝食シリアルの箱の中にメッセージを読み取るなど無茶苦茶すぎるけれど、もうここまで来ると何でも許せてしまうから不思議である。M・ナイト・シャマラン監督の「俺映画節」全開なのだが(あいかわらず突然大きな効果音でびっくりさせてくれるしね)、ごくごく身近な人が、実はその謎を解く重要な人物だったりして、身近なものをファンタジックなものとして描こうと努力している様が伺えるあたり、その臭い臭いメルヘンぶりに、だんだんと胸を打たれて来るのである。

 心地好いのは、アパートの住人たちの皆が管理人に協力的ということである。管理人を馬鹿にしていた人達まで何の不平も言わずにすぐに協力して、みんなが一緒に手を取り合ってひとつの目的を達成しようと思案する。管理人の人柄の良さも気持ちが良いし、登場人物皆をヒーローに仕立て上げるところも嬉しい。話の都合は良すぎるけど、何だかホッとさせられる映画なのだ。

 余談だが、唯一嫌われ役として出て来る映画評論家のおじさんの存在も忘れてはならない。彼が化け物にやられる直前に吐くセリフは映画慣れしているウンチク野郎にとっては、これほど「笑える」セリフはあるまい。(2008/3/5)