キン肉マン コンプリートDVD-BOX

生誕29(にく)周年!キンケシ全418体付BOX予約開始!
男なら一度は夢見た「キンケシコンプ」が大人買いで現実に!

キン肉マン

 『キン肉マン』。70年代後半生まれの人なら、このタイトルを聞いてワクワクしないわけがない。

 僕は77年生まれだが、まさに僕の少年時代は『キン肉マン』一色だった。「ガンダム世代」というものがあるように「キン肉マン世代」というものがあって、当時の男の子たちは、ほぼ例外なく全員当たり前のように『キン肉マン』を見ていたものだ。僕は『ガンダム』については何も知らないけれど、『キン肉マン』ならばそれだけで丸一日語れる。それが当たり前の世代に生まれているからだ。同世代の人は皆『キン肉マン』を熱く語れる申し子たちである。皆ファミコンのゲームにもハマったし、皆暇があればノートにキン肉マンの絵を描いていたものだった。よく『キン肉マン』のごっこ遊びもした。友達同士で漫画の中の必殺技「パロ・スペシャル」を真似したものだった。人見知りする親戚とも『キン肉マン』という共通の話題があれば仲良くなれた。本当に僕等にとってのマイベストだった。これは一大社会現象だった(逆に言えばこれが好きというとお年が知れるわけ)。

 僕にとってもこれは一番好きな漫画だった。僕が生まれて初めて買った漫画本は『キン肉マン』だった。このときは吹き出しの漢字が読めなくて、姉にお願いして全部の吹き出しにわざわざふりがなを付けてもらった。僕の枕は『キン肉マン』のキャラ枕だったし、ごみ箱も『キン肉マン』だった(これだけは今も実家に残っている)。下敷きも『キン肉マン』で、僕はその裏に書かれてあったキャラ名鑑の「出身国」という漢字が読めず、父親に「読んで」と何度も何度も読ませて苛つかせたものだった。

『キン肉マン』で国の名前を覚える

 思えば有名な国の名前のほとんどは『キン肉マン』で覚えた。登場キャラクターはどれもユニークで面白かったが、皆に「出身国」があるところが好きだった。テリーマンはアメリカ、カレクックはインド、バッファローマンはスペインといった具合である。僕はロビンマスクが一番好きだったので(その理由はクラスの中で僕だけがロビンマスクの絵をうまく描けたから)、ロビンマスクの出身国イギリスに憧れていたし、イギリスには青いイメージを持っていた。国のあらかたのイメージは『キン肉マン』で覚えた。中国はラーメンマンのようにラーメンの国で、旧ソ連はウォーズマンのように黒くて冷たい国だと思っていた。キン肉マンが日本代表超人だったことは、今日思えば日本人としては嬉しいことだ。堂々と海外で紹介できる日本の傑作漫画だと思う。(余談だが、海外のある国では『キン肉マン』は放送禁止になっている。正義超人のブロッケンJrの鍵十字がNGだったという)

 男と男の1対1(タッグマッチでは2対2)のぶつかり合い(今風に言えばガチンコバトル)。数々の名勝負を残した。とにかく熱い漫画だった。キン肉マンはすぐにおしっこをもらす弱虫なのに、本気を出すと強かった。本当におかしくて、かっこよかった。「火事場のクソ力」は当時の少年たちを大いに勇気付けた。「風林火山」という言葉もこれで覚えた。とにかく技のギミックが凝っていてかっこよかった。また、これほど「友情」を感じさせる漫画も他にはなかったろう。ギャグ漫画としても絶品だった。当時は『キン肉マン』を真似してよく友達と「屁」を出し合って遊んだものだ。

 『キン肉マン』は今年で29周年ということだ。29(にく)ということで、これはめでたいので、2月29日、金曜の29日、つまり「金29」、これを「キン肉マンの日」とし(日本記念日協会にも認定された)、東映は29日から一週間、大々的に「キン肉マン映画祭」を開催している。また、29周年記念として、アニメの全話と映画7作を収録した『コンプリートDVD-BOX』(怒濤の35枚組)も完全予約限定生産で予約を開始している。なんとこのDVD-BOXには当時の少年たちを夢中にしたキンケシ全418体を付けるという大サービス付きだ。僕も色々なDVDを買って来た男だが、これほど特典にぶったまげたことはなかった(キンケシだけでも欲しいくらいだ)。

少年達が取り憑かれたように集めたキンケシ

 キンケシは1億個以上を出荷したという。キンケシは僕等にとって宝石よりも価値のある大切なものだった。キンケシをスゴロクのコマに使ったり、めんこに見立てて地面に叩きつけたり、針で串刺しにしていたぶったり、腕をハサミでちょんぎって瀕死の状態を演出したり、氷の中に閉じこめたり、皆あらゆる遊びを開発して楽しんでいた。親の財布からお金をくすねてでも、自動販売機の下に埋もれた小銭を拾い集めてでも僕等はキンケシを買っていたものだが(給食の牛乳瓶の蓋で偽の100円硬貨を自作したこともあったがこれはうまくいかなかった)、男なら一度は夢見た「キンケシ全コンプ」が20年以上の歳月を経て、ついに実現可能になった。DVD込みで10万円というのはバカ高にも思えるけれど、普通にガチャガチャで集めれば10万円じゃ足りないはず。今まで復刻したことのないキンケシ。今このチャンスを逃せば二度目はないだろう。男ならここで大人買いしないわけにはいかない!

 ところで、「キン肉マン映画祭」のチケットは4500円と高額ながらも、販売開始から2時間もたたないうちに売り切れとなったそうだ。当たり前だろう。さっきも書いたように、僕等の世代にとって『キン肉マン』は宝石以上に価値のあるものだったのだから。僕もその世代の一人として、この映画祭を取材させてもらえて、こんなに良い役得はないと思った。

ファン同士でヒートアップする「キン肉マン映画祭」

 会場に来て僕がまず最初に目撃したものは、復刻したキンケシのガチャガチャ(しかも料金は当時と同じ100円!)の前にできた長蛇の列。イベント前からその人気の高さを再確認させられた。集まったお客さんは、やはり予想通り70年代後半生まれの若者ばかり。しかし女性客がかなり多かったのは意外だった。上映される『キン肉マン』の映像を見て「キャー」と黄色い声をあげていたのにも驚いた。この日のために『PRIDE』の佐藤大輔氏が編集した『キン肉マン』の紹介映像にファンたちは涙した(僕も一ファンとしてかなりうるっときましたです)。マンモスマンなど懐かしいキャラクターが次々とスクリーンに映しだされるや、「おお!」と興奮の連続で、僕も仕事を忘れて映像に見入った。ほんと、ゆでたまご先生と、このイベントを企画したスタッフの皆さんに感謝したい気持ちでいっぱいである。

 ゲストの皆さんの多くは70年代生まれ。吉本芸人が集まったトークショーも白熱。「キン肉マン談義」も語りだすと皆さん止まらない。お客さんも皆全部わかっているから、ツーカーで通じ合っていた。ここに集まった人達の共通点はひとつ。皆『キン肉マン』を心の底から愛しているということだった。そんな愛につつまれた一夜で、終電ぎりぎりの夜遅くまでイベントは続いた。テーマ曲を歌っていた串田アキラさん(宇宙刑事ものや戦隊ものの歌手としても有名だ)が登場してのライブでは一気にヒートアップ。20年以上の歳月もなんのその、パワフルな歌いっぷりだった。皆が子供の頃よく歌っていた歌だ。懐かしい! 僕も20年ぶりにこの歌を聴いて、初恋のことや、学校の先生に叱られたことなど、あらゆる思い出がフラッシュバックした(僕の学校では音楽祭でこのテーマ曲を演奏した)。この気持ちは皆同じだったろう。串田さんが「あんなに小さかった子供たちがこんなに立派な大人になったんだね」と笑顔で語りかけてきたときには、まるで串田さんが僕らのお父さんみたいに見えてきて本当に嬉しかった。

歴史的一戦、キン肉マンVSウォーズマン!

 この日キン肉マンとウォーズマンのバトルの一部始終が上映された。これはファン投票で1位になった名勝負である。この成功から『キン肉マン』は最盛期に突入したわけだから記念碑的一戦である。ラストシーンでキン肉マンが「この勝利はラーメンマンに捧げる」といった時には僕もうかつにも泣いてしまったほどだ。

 映画評論家の観点から語るとして、ウォーズマンが覆面をはぎ取るところで雨で顔が見えなくなるなど演出が細かいし、いつもいいところで次回へと続くタメの見せ方はこれに勝るものはない。要所要所に挿入されるギャグ(時事ネタが多く時代を感じさせるが)のネタも絶妙で、今は亡きはせさん治氏のナレーションの名調子は今の感覚で見てもさすがとうならせるものがある。

 額に「米」とか「中」とか国名が漢字で描かれてあるあたり、冷静に考えるとまったくふざけたギャグとしか思えないのだが、連載を続けているうちにこのギャグキャラたちを男と男の本気で熱いヒロイックロマンの主人公たちへと進化させていったところは凄いとしか言えない。これは以後の『週刊少年ジャンプ』の方向性を決めてしまったといっても過言でない。事実、現在の『NARUTO』などを見てもまだ通じるものを感じるのだから。

 実は僕はこの映画祭で20年ぶりに『キン肉マン』を見るのが少々怖くもあった。なぜなら、これは僕の少年時代の思い出の作品だからして、その綺麗な思い出をこの日壊されそうな気がしていたからだ。子供の頃は本当に好きだったけど、今大人になって見るともしかしたらつまらないかもしれないんじゃないかと、そこを恐れていたわけである。しかしこの日実際に『キン肉マン』と再会し、それが僕の子供の頃に見た『キン肉マン』の如く今も全く輝きを失っていなかったことに感動で手が震えた。大人になった今見てもこの作品は熱いままだった。それはやっぱりこれが僕の永遠のマイベストなのだとはっきりわかった確かな瞬間だった。(2008/2/29)

イベントの様子(photo:sawada)

キンケシ キン肉マンの日認定 ゲストの吉本芸人の皆さん ミノワマン 司会の太田真一郎 吉野家の牛丼を食べるジャイアント白田
ゆでたまご先生にDVD-BOXを贈呈されるジャイアント白田 串田アキラ

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キン肉マン コンプリートDVD-BOX』は東映より12月20日発売。予約締め切りは7月13日。