第5夜『シンドバッド7回目の航海』
カクカク人形アニメーションの巨匠ハリーハウゼンここにあり!
シンドバッド、あるいは千夜一夜物語を題材にした映画では、僕はこれが一番だと思う(ただし『バグダッドの盗賊』を別格としてだよ)。1958年作。『7回目の航海』なんて意味もなくかっこつけて7の数字を使っているところからして愛着たっぷり。僕はもう3度も観たが、毎度驚かされるし、劇中出て来る怪物たちにはつくづく惚れ惚れさせられる。話のストーリーだけを言えばあまり面白いものではないのだが、次から次へと出て来る怪物たちの動きにただただ圧倒される90分だ。
映像がカクカクしているのは一コマ一コマにブレがないから。この怪物たちを動かしているのは、ご存知レイ・ハリーハウゼンだ。僕等B級SFマニアには神みたいな存在である。ハリーハウゼンといえば皆誰しも『アルゴ探検隊の大冒険』をあげるが、『アルゴ』よりもこっちの方が出来は上。ハリーハウゼン渾身の力作である。
出て来る怪物は、一つ目の巨人サイクロプスから、ドラゴンも出るし、次から次へと出て来てもう大興奮。双頭鷲のヒナが出て来たときにはまったくもってびっくりしましたよ。ええ。さらにがい骨が出て来たときにはあまりの凄さにくぎ付けに。がい骨と戦うシーケンスは『アルゴ』にも見られるが、あっちはちょっと雑。こっちは敵が一匹になった分、かなり丁寧に描かれていて、動きのスピード感、重量感にびびらせまくりである。途中盾を投げつけるなど、芸も凝っている。
今見ても「あ、動いてる!」という感動を覚える。造形美のような、そういう美がある。これはCGにはない感覚である。一コマ一コマ丹念に作られた手作りなりの力強い筆致を感じて欲しい。これに比べると最近のCGを多用した映画がスカスカに見えてくる。そりゃあピーター・ジャクソンの『キング・コング』はオブライエンの『キング・コング』よりも凄いと思ったけど、ああいう例外を除けば大抵のCGは下手クソなものばかり。今見てもまだハリーハウゼンの方が凄いと思ってしまう。CGから入った若い世代にこそ見てもらいたい一本だ。(2008/2/24)