チャーリー・チャップリン
ライフ・アンド・アート

チャップリンのその天才ぶりに圧倒される1本

チャーリー・チャップリン ライフ・アンド・アート
『チャーリー・チャップリン ライフ・アンド・アート』
ジェネオン エンタテインメント

 2003年にチャップリン映画祭が開催されたばかりだが、去年もまた彼のための大きな映画祭があり、チャップリンは再び脚光を浴びている。死後30年経過しているのに、いまだにチャップリンは映画の神として君臨し続けている。

 チャップリン関連のドキュメンタリーは他にもたくさんある。今までに何本作られたかわからないが、有名なのはジェームズ・メイスンがナレーションを務めた『チャップリン・その素顔と未公開映像』で、これはチャップリンのドキュメンタリーでも最高の出来と賞賛されていたものだが、今日ここで紹介する『ライフ・アンド・アート』はそれを超える出来栄えである。『チャップリン・その素顔と未公開映像』は研究資料としての価値は高いが、伝記と呼ぶには物足りない。しかしこの『ライフ・アンド・アート』はまさに彼の伝記である。劇場公開用とあって、よく作られた内容で、2時間という短い時間の中にきっちりとチャップリンの姿が描かれている。

 マリオン・デイヴィスと共演している映像や、日本でチャップリンが箸を使ってテンプラを食べる映像など、今まで見たこともない秘蔵フィルムが多数収録されている点でも価値が高い。

 ロンドンの貧しい日々や舞台俳優としての人生は丸ごと省き、アメリカで映画デビューを飾り、放浪紳士チャーリーが誕生する1914年からスポットが当てられている点は好感がもてる。すべての長編について一本一本たっぷり語っているところが本作の見どころで、むしろ人としてのチャップリンではなく「映画の天才」としてのチャップリンが描かれており、彼のカメラワークや演出法など、その仕事ぶりをたっぷりと賞賛する濃厚な2時間になっている。

 嬉しいのはインタビューを受けている顔ぶれだ。俳優のジョニー・デップは『黄金狂時代』のパンのダンスを大絶賛。言われてみれば、たしかにパンのダンスをしているときのチャップリンの動きは改めてみてもすごい。また、ウディ・アレンは『街の灯』を自分にとって最高の映画だと語り、マーティン・スコセッシが『殺人狂時代』の演出の妙味について熱く語っている他、ロバート・ダウニーJr.、リチャード・アッテンボロー、ミロス・フォアマン、マルセル・マルソー、クレア・ブルームらにもインタビューしており、第三者の視点からチャップリンを批判も賞賛も含めて率直に評価しているところが興味深い。

 この映画の中で使用されているチャップリンの映像の断片を見てもついつい笑ってしまう。これを見ると、チャップリンって、こんなにもかっこよかったのかと、チャップリンってやっぱり天才だったんだなあと思い直すことだろう。(2008/2/10)