象の背中
余命半年。死ぬまでは生きていたい。
(C)2007「象の背中」製作委員会
発売元:ジェネオン エンタテインメント/ テレビ朝日
販売元:ポニーキャニオン
これは泣ける。感動の傑作だ。時代の寵児と言われて来た秋元康の初の長編小説を、井坂聡が映画化。そのDVDが3/19日にリリースされる。
これは、ケミストリーが歌う主題歌「最期の川」が大ヒットし、アニメ化作品が65000枚超の大ヒット、映画にドラマに多方面で話題になった、今最もトレンディーなタイトルである。
アニメも映画も、いずれも話題性は強いが、シネマガ読者にぜひともお薦めしたいのはこの映画版『象の背中』だ。今や日本に限らずハリウッドでも引っ張り凧の役所広司が癌で余命半年と宣告されてしまった会社員を熱演しており、その妻役を今井美樹が好演している。今井美樹にとっては、実に20年ぶりとなる映画出演だが、役所広司を食ってしまうほどの存在感で、古風で落ち着いたそのたたずまいは、まさに理想の妻像と呼ぶにふさわしい(今井美樹の女性美だけでも一見する価値あり!)。長男長女役には塩谷瞬、南沢奈央。苦楽を共にする幸せな家庭像が描かれる。
この手のテーマは『マイ・ライフ』など、以前からありがちで、ちょっとばかし臭いものが多かった。これも同系統のお涙頂戴映画になるのかもしれないが、それほど単純なものではない。話の筋は簡潔だが、その内面にはとても複雑な含みを感じさせる。
キャッチコピーは「大切な誰かのことを想いながら、ひとりで観てください」。「ひとりで」というのがポイントだ。その理由はこうだ。主人公も一人だからである。ひとりで観て、主人公と同じ気持ちを感じ取ることに意味がある。実体のわからない、このなんともいえない気持ち。ゆったりとした映画のテンポに身を任せて、海の映像を眺めながら物思いにふけってみたい。そんな映画である。
観終わった後も、ショックを2・3日は引き摺ってしまうだろう。もしも自分なら・・・と、しばらく考えさせられる映画だ。井川遥、高橋克実、岸部一徳と脇役陣もボリューム満点。映像特典も満載のお買い得品だ。(2008/2/7)