マグノリア (レビュー)
Magnolia
★★★1/2
<アメリカ/1999年/人間ドラマ>
製作・監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
撮影:ロバート・エルスウィット/音楽:ジョン・オブライエン
出演:ジェイソン・ロバーツ、フィリップ・ベイカー・ホール、
ジョン・C・ライリー、ウィリアム・H・メイシー、ジェレミー・ブラックマン
トム・クルーズ、フィリップ・シーモア・ホフマン、
ジュリアン・ムーア、メリンダ・ディロン、メローラ・ウォルターズ
●またまた素晴らしい群像劇の登場
やってくれた。「ブギー・ナイツ」でカルト的な人気を得たP・T・アンダーソンの最新作で、12人のキャラクターが織りなす一日の群像劇である。
群像劇というのは、沢山の主人公が登場し、それぞれの人物がドラマを繰り広げるというもので、80年代ごろから頻繁に作られるようになり、古典映画には少ない現代映画の傾向のひとつといえる。この手のドラマはロバート・アルトマン、ウディ・アレンらに撮らせたらピカイチであるが、新鋭P・T・アンダーソンはその演出テンポといい絶品で、はやくも栄光の殿堂入りし、彼らと同等の地位に立つ群像作家になったといえよう。
●濃い登場人物
濃いキャラクターが登場するのは群像劇の特徴であるが、この映画はとりわけ濃い。かつて天才少年だったが今は冴えない男、ガンになったクイズ番組の司会者、いつも興奮しているセックス教祖、コカインがやめられない女、などなど普通じゃない人たちが登場する。
演技者も個性派がそろっている。名優ジェイソン・ロバーツもいるが、注目はトム・クルーズ。「アイズ・ワイド・シャット」とはまったくカラーの異なるキャラクターを演じているが、つまり彼も芸幅が広くなったというわけだ。
僕のお薦めはフィリップ・ベイカー・ホール。どこか哀愁のある老人だった。
●キャラクターを結ぶのは音楽だ
この映画は十人十色いろいろなエピソードを描いている。個々のエピソードだけでも十分に楽しめるのだが、P・T・アンダーソンは、そのエピソードを音楽でつなげたようだ。場面は違っていても、音楽は流れ続けている。その上でその音楽のイメージにあったドラマが展開されていく。オープニングのスピーディな演出からそれは顕著だが、中でもハイライトはクイズ番組のシークエンス。登場人物の不安感が一挙に高まっていく様を、いくつものシーンを複合させてひとつの音楽でみせた演出には脱帽である。
●観客を間違いなく驚かす突然の仕掛け
名作には仕掛けがある。この映画にもあるが、しかしこの大いなる仕掛けには観客のみんなも呆れかえっただろう。考えもつかない仕掛けである。
登場人物は皆、人生は違えど、同じ天候のもとで生活する。この映画は、あえて天気のうつりやすい地方を舞台にし、劇中何回か天気予報をタイトルで表示している。ところが、ここに仕掛けがあった。アメリカではたまにこのような出来事があるときくが、いくらなんでもこれには驚きである。”偶然”というものを題材にしていても、多少行き過ぎではないかと思えるほどの大必殺技だ。実にいい。
最後に一言:タイトルから何か意味深だ
★★★1/2
<アメリカ/1999年/人間ドラマ>
製作・監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
撮影:ロバート・エルスウィット/音楽:ジョン・オブライエン
出演:ジェイソン・ロバーツ、フィリップ・ベイカー・ホール、
ジョン・C・ライリー、ウィリアム・H・メイシー、ジェレミー・ブラックマン
トム・クルーズ、フィリップ・シーモア・ホフマン、
ジュリアン・ムーア、メリンダ・ディロン、メローラ・ウォルターズ
●またまた素晴らしい群像劇の登場
やってくれた。「ブギー・ナイツ」でカルト的な人気を得たP・T・アンダーソンの最新作で、12人のキャラクターが織りなす一日の群像劇である。
群像劇というのは、沢山の主人公が登場し、それぞれの人物がドラマを繰り広げるというもので、80年代ごろから頻繁に作られるようになり、古典映画には少ない現代映画の傾向のひとつといえる。この手のドラマはロバート・アルトマン、ウディ・アレンらに撮らせたらピカイチであるが、新鋭P・T・アンダーソンはその演出テンポといい絶品で、はやくも栄光の殿堂入りし、彼らと同等の地位に立つ群像作家になったといえよう。
●濃い登場人物
濃いキャラクターが登場するのは群像劇の特徴であるが、この映画はとりわけ濃い。かつて天才少年だったが今は冴えない男、ガンになったクイズ番組の司会者、いつも興奮しているセックス教祖、コカインがやめられない女、などなど普通じゃない人たちが登場する。
演技者も個性派がそろっている。名優ジェイソン・ロバーツもいるが、注目はトム・クルーズ。「アイズ・ワイド・シャット」とはまったくカラーの異なるキャラクターを演じているが、つまり彼も芸幅が広くなったというわけだ。
僕のお薦めはフィリップ・ベイカー・ホール。どこか哀愁のある老人だった。
●キャラクターを結ぶのは音楽だ
この映画は十人十色いろいろなエピソードを描いている。個々のエピソードだけでも十分に楽しめるのだが、P・T・アンダーソンは、そのエピソードを音楽でつなげたようだ。場面は違っていても、音楽は流れ続けている。その上でその音楽のイメージにあったドラマが展開されていく。オープニングのスピーディな演出からそれは顕著だが、中でもハイライトはクイズ番組のシークエンス。登場人物の不安感が一挙に高まっていく様を、いくつものシーンを複合させてひとつの音楽でみせた演出には脱帽である。
●観客を間違いなく驚かす突然の仕掛け
名作には仕掛けがある。この映画にもあるが、しかしこの大いなる仕掛けには観客のみんなも呆れかえっただろう。考えもつかない仕掛けである。
登場人物は皆、人生は違えど、同じ天候のもとで生活する。この映画は、あえて天気のうつりやすい地方を舞台にし、劇中何回か天気予報をタイトルで表示している。ところが、ここに仕掛けがあった。アメリカではたまにこのような出来事があるときくが、いくらなんでもこれには驚きである。”偶然”というものを題材にしていても、多少行き過ぎではないかと思えるほどの大必殺技だ。実にいい。
最後に一言:タイトルから何か意味深だ