ドーン・オブ・ザ・デッド (レビュー)

ホラー映画にしてはスタイリッシュだ
監督:ザック・スナイダー
出演:サラ・ポーリー
(2004年アメリカ映画)

 

 現代版「ゾンビ」。僕はこういう無茶苦茶な作り物が大好きである。1本で3話構成に分けたところがよくできたもんである。ちなみに僕は「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」は昔見たことがあったが、「ゾンビ」はまだ見たことがないので、予備知識なしで見ることが出来た。

 第1話は、初っぱなから、何の前触れもなく、いきなりゾンビが登場して、勢い任せに畳みかけるように恐怖シーンを次々とやってくれて大変頼もしい。理由もない不条理さがこの映画の美学である。

 第2話は、ショッピング・モールに逃げ込んでからのサバイバル生活。閉ざされた空間で、ゾンビが出るか出ないかという不安が描かれる。後からやってきた病人が突然ゾンビになるところには本気でドキッとさせられる。敵さんは凶暴だが、カギを開けて中に入る能がないため、外の世界と中の世界に国境線のようなものができて、なかなか興味深い密室劇になっている。幸い生活に必要なものがすべて揃っており、のんきにチェスをプレイするシーンなどもあって、お隣さんとホワイトボードで会話するところにセンスがある。

 第3話はゾンビの町からの脱出。武装強化したバスに乗って逃げるのだが、ゾンビがあちこちからうじゃうじゃ出てきて、バスそのものが呑み込まれんばかりの物々しい光景は圧巻だ。日暮れから日の入りまでの薄暗さ、真っ暗な深夜、そして日の出の明るさと、映像の色遣いが変わっていく様も鮮やか。性格の悪かったキャラクターがここで大活躍するところが渋い。

 以上、3話とも丹念に練られており、ただのホラーで片づけられるのはもったいない1本である。

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