セブン・イヤーズ・イン・チベット (レビュー)

Seven Years in Tibet

★★★1/2

<アメリカ/1997年/136分/歴史劇>
製作・監督:ジャン・ジャック・アノー
原作:ハインリヒ・ヒラー/脚本:ベッキー・ジョンストン
撮影:ロバート・フレイズ/音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ブラッド・ピット、デビッド・シューリス、B・D・ウォン、マコ

ストーリーのネタはあかしていませんが、作風のネタはあかしています。

●ブラッド・ピットを使うとは、チャレンジャーだなぁ
 これは実話である(たぶん?)。チベットの宗教指導者ダライ・ラマの家庭教師になったオーストリアの登山家ハインリヒ・ヒラーの半生を描いた伝記映画で、監督は「愛人/ラマン」のジャン・ジャック・アノー。
 アノーが監督、舞台はチベットと聞けば、我々は壮大なる大河ドラマを想像することだろう。事実そうなのだから。チベットの町の造形美を見ただけでも感動的なのである。フランスの映画術がオリエンタル化し、ハリウッド独特のつかみ安さを加味した普遍的な作品に仕上がっている。
 この映画の主人公を演じるのはブラッド・ピットである。この手のドラマに彼のような派手でフレッシュなスターが出演してよいものだろうかと、最初は場違いな気がしないでもなかったが、ところがどうだ。ブラッド・ピットは主人公の精神的な悩みを見事に演じている。まだ見ぬ息子への想いで男泣きするところなど、もらい泣きしてしまうことだろう。ピットはもしかしたら、文芸的な作品でこそ、真の実力を発揮できる俳優なのかもしれない。
  

●ひとつひとつのシーンの終わり方
 歴史を扱った映画の場合、映画の出だしと終わりとで、どれだけの時が過ぎていくことだろうか。この映画はチベットのシーンだけでも7年もの年月が経過する。
 そうなると、2時間ちょっとの上映時間では、見せるべきストーリーも限られてくるのだが、そこでよく使われている手が、シークエンスのジャンプである。興味深い体験だけをまとめて構成すれば、冗長な箇所がなくなり、上映時間も苦にならなくなる。但し、この技術を駆使するには、シークェンスからシークェンスに移るとき、何らかの落ちを必要とする。でなければ、観客を戸惑わせてしまうであろう。
 こういう大作の場合、通常落ちといえるものは地味であり、意識しなければ気付かない。その気付かないような落ちこそ、この映画にふんだんに見られる面白いポイントであり、隠されたトリックであると僕は考える。巧妙な話術には暇を感じさせない。
 

最後に一言:異国情緒溢れる作品にはどうしてか引かれるんだよな

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