ストレイト・ストーリー (レビュー)

The Straight Story

★★★1/2

<アメリカ/1999年/人間ドラマ>
監督:デビッド・リンチ
出演:リチャード・ファーンズワース、
シシー・スペイセク、ハリー・ディーン・スタントン

ストーリーのネタはあかしていませんが、作風のネタはあかしています。

●デビッド・リンチって・・・
 カルト監督デビッド・リンチの最新作である。ところが、これが感動のロード・ムービーなのだ。
 73歳の老人が、喧嘩して10年間も会ってない兄と仲直りするため、はるばる500キロトラクターで旅をするという実話を映画化している。
 ディープな映像を期待していたファンにとっては、さぞかし嬉しい”裏切り”だったろう。なぜって、リンチが新しい作風に挑戦してくれているからだ。どちらかというと閉ざされたムードに定評のあるリンチなのに、今回は大自然を移動撮影であまりにも美しく描写。映画は時速8キロのトラクターと同じく、ゆったりと流れていく。この牧歌的なムードと、見るからに同情してしまうよぼよぼのじいさんが、黙々とひたすら目的地へと向かっていく様が何とも言えない感動を与えてくれる。
 リンチらしい演出もあり、登場人物はちょっとユニークだ。室内のシーンでは明らかに”リンチ・ムード”を感じとることもできる。
 

●リチャード・ファーンズワース名演
 老人役リチャード・ファーンズワースは、名演を見せる。葉巻の吸い方だけでも、”老い”を感じさせる上手さ。彼は沈黙だけで演技してしまった。リンチ監督はとりわけ会話シーンを少なくして、老人の姿を遠くから眺めるように捉えている。そうやって老人を客観視することで、彼が”若さ”を回想する様を、我々の想像に委ねさせることができたのだ。ときには老人の顔がかっこよく見えたりもする。一言でいうとその老人は、”愛すべきキャラクター”。優れた映画には欠かすわけにはいかない”キャラクター”がこの映画にはある。
 ファーンズワースの演技に評価プラス。

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