始皇帝暗殺 (レビュー)

The Assassin

★★★1/2

【R指定】
<日本・中国・フランス・アメリカ/1998年/172分/歴史劇>
監督:チェン・カイコー
出演:コン・リー、チャン・フェンイー、リー・シュエチェン    

 中国映画は美しい。セットから細かいし、照明も気配りしていて、あの色彩はまるで絵画のようだ。
 チェン・カイコーは、中国を代表する偉大なる監督である。毎回地形効果を生かした素晴らしい映画を発表しているが、今回は日本人が書いた中国の歴史小説を映画化し、始皇帝の暗殺事件が起こるまでの歴史を、色々な登場人物の視点から描いた壮大なるドラマを作り出した。

 ただ、今回は芸術思考ではなく、娯楽的に走った傾向があり、いたるところで商業色を感じさせ、香港のアクション映画ぽくなって少し残念だった。音楽も、その時代色のムードを削いでいるし、チェン・カイコーもスタジオ側の呪縛にはまってしまったという感じだ。今後の彼の監督ワークが心配である。

 主演は知的な美しさで人気のあるコン・リー。でも彼女もだんだんとスター性が出てきてしまっていて、妙にその時代の中国人ぽさがない。なんか20世紀の美女がそのまま衣裳着ているだけ、みたいな気分もある。

 しかし、オープニングのエピソードを始め、イタリア映画のような想像力のある詩的シーンも多数あり、チェン・カイコーのセンスを味わえるという点では、おいしい作品ではあった。

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