ザ・シークレット・サービス (レビュー)

In the Line of Fire

★★★1/2

【R指定】
<アメリカ/1993年/128分/サスペンス>
製作:ジェフ・アップル
監督:ウォルフガング・ペーターゼン/脚本:ジェフ・マグワイヤー
撮影:ジョン・ベイリー/音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:クリント・イーストウッド、ジョン・マルコビッチ、
レネ・ルッソ、ディラン・マクダーモット、ゲーリー・コール

注意:ネタをあかしています。

●あたらしい犯人キャラ
 この映画は、なかなか発想がよくできている。ジョン・F・ケネディの暗殺を阻止できなかったシークレット・サービスを主人公にするところは、アイデア賞もの。暗殺をテーマにした映画の中でも、白眉といいたい。邦題にその自信が表れている。ウォルフガング・ペーターゼン監督の指導力の勝利だ。
 この映画に登場する犯人は、奇怪な行動をとるも、頭が良い。ジョン・マルコビッチ名演である。この犯人役が従来の犯人キャラとは一味も二味も異なる。自分の才能を過信しており、堂々とベテラン・シークレット・サービスに挑戦状を叩きつけるが、それはそのシークレット・サービスに対する精神的圧迫で、まるで苛めだ。極度にライバル視し、敬愛しているからこそ、この初老のシークレット・サービスが苦悩する様子を観察することで、ストレスを発散していく異常ぶり。だからこそ、2人の電話での緊迫したやりとりが面白くなってくる。
  

●大統領の死か、自分の死か、その葛藤
 シークレット・サービスとは大統領のボディ・ガードのことであるが、皆さんは、シークレット・サービスという職業について、こう思ったことはないだろうか。「よく他人のために死ねるね」と。この映画は、そこのところを、主人公の心の葛藤として描写している。
 ケネディのときは、暗殺を阻止することはできなかったが、犯人は、その失敗をシークレット・サービスの責任だと、わざと非難し、主人公を自己嫌悪に落としこもうとする。
 この描写が顕著なのは、建物の屋上での宙釣りサスペンス。主人公は今にも転落しそう。その状況を犯人は冷やかしてくる。この犯人を撃てば、大統領暗殺は阻止できるだろう。しかし、自分は落ちて死んでしまう・・・。こうも間近に己の身に死が迫ると、主人公は犯人を撃つことができなくなってしまう。躊躇している内、辞任を引き留めたばかりの相棒が殺される。この何たる残酷な展開。自分が犠牲になっていれば・・・。その屈辱が、またも主人公の大きな心の痛みとなってしまう。
 ラストは、そのシーンと対照的に演出しているが、一騎打ちのシーンなどは、見ていて応援してしまうし、勝ったときの喜びもひとしおである。
 クリント・イーストウッドは相変わらず様になっている。
 

最後に一言:監督はドイツ人なのに、なーんかアメリカ臭い

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