ザ・エージェント (レビュー)

Jerry Maguire

★★★1/2

<アメリカ/1996年/恋愛もの>
製作:ジェームズ・L・ブルックス
監督・原作・脚本:キャメロン・クロウ
撮影:ヤヌス・カミンスキー
出演:トム・クルーズ、レニー・ゼルウィガー、
キューバ・グッディングJr.、ボニー・ハント
(3月3日午後9時日本テレビ系放送)

ストーリーのネタあかしはしていませんが、作風のネタあかしはしています。

●タイトルが誤解されやすい
 原題は”ジェリー・マグワイア”という主人公の名前で、いまひとつ感じるものがないが、邦題も「ザ・エージェント」と陳腐な名が付けられている。”ジ・エージェント”の間違いという点も気になるし、こういうタイトルをつけられると、何だかおかたい社会派映画かサスペンスを想像してしまいがちだ。
 ところが、この映画は、首になったエージェントが後に大成功を収めるという巨大なアメリカン・ドリームが描いてある感動のヒューマン・ドラマだった。
 

●女性映画としても上出来
 これをプロデュースしたジェームズ・L・ブルックスは「恋愛小説家」など、特に恋愛面において手腕を発揮する作家で、いつも共感のわく微笑ましい場面を見せてくれるのだが、この「ザ・エージェント」もまた素晴らしい恋愛映画である。
 実は僕は恋愛映画はあまり面白いと思ったことがないのだが、この人の作品だけは僕の目から見ても実に面白いものだと思った。
 この映画ではもっぱら女性の立場からラブ・ストーリーを描いた形になっているが、なかなかリアリティもあって、女性映画としても高い評価を与えていいだろう。この映画のヒロインは映画ファン(特に僕)がいかにも好きそうな女性像である。
 

●キューバ・グッディング・Jr.最高!
 この映画の出演者は男も女も皆素晴らしい演技を披露している。トム・クルーズも最近の「マグノリア」よりは断然こちらの演技の方が上手い。
 でもひときわ目立つのがキューバ・グッディング・Jr.。”嬉しかったら思い切り泣け”みたいな感じで、とにかく感動を体全体で表現する(これは黒人役者ならではの特徴だ)。ラストシーンで家族に向かって「みんな愛してる」と喜びを伝えるシーンはまさしく圧巻。
 彼はこの作品でオスカーにも輝いたが、授賞式では映画のワンシーンさながらの感動的スピーチをしてくれた。
 

●既成ロック音楽との融合を計る
 この映画ではブルース・スプリングスティーン、ポール・マッカートニー、ボブ・ディランなど、沢山のロック音楽が使われている。それも書き下ろしではなく、既成のものである。それを見事に映像と融合させているが、それがこの映画をますます感動的にしているのだ。
 

最後に一言:見るものを優しい気持ちにする感動のドラマ

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