パトリオット (レビュー)

The Patriot

★★★
<アメリカ/2000年/歴史劇>
監督:ローランド・エメリッヒ
撮影:カレブ・デシャネル/音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:メル・ギブソン

ストーリーのタネを少しあかしています

●最良の映像、最良の音楽、最良のストーリー、最悪の構成
 この映画を見た後は、考えさせられたものだ。ショックがあまりにもでかい。
 映像はまさに究極の美というにふさわしく、色彩、ライティング、構図、アングル、何もが逸品。ロケーションも完璧で、美しい自然をバックに見せるワンシーン・ワンカットは、すべてが息を呑むばかり。
 音楽も壮大で綺麗。ストーリーに描かれていることも素晴らしいことである。それらのに、これがなぜだか面白くない。脚本はよくできているので、そこそこ楽しめるのだが、演出が弱く、外見だけで中身がない。
 総計1時間以上はあるだろうと思えるアクション・シークエンスは、ロマンチシズムに溢れており、半分残酷で、なかなか見応えがあるのだが、「バリー・リンドン」の僅か10分足らずの地味な戦争シーンの方がはるかに良くできているというのは皮肉な話である。
 こうなってくると、ローランド・エメリッヒのセンスがないというしかない。彼は「インデペンデンス・デイ」を大成功させているが、いうなれば「ID4」は、どの監督が撮っても面白い内容であった。しかし「パトリオット」のような詩的映像を重視した歴史劇となると、監督の腕前に作品の質が左右されてしまうので、下手な構成では芸が冴えない。
 せっかくこんなに美しい映像なのに、フィルムのつなぎ方がショボく、また音楽と映像の相乗作用というのもわかっていないので、もったいない気がする。だから感動すべきシーンで、お涙頂戴を狙っているのは分かるが、まんまと外しているところが嘆かわしい。
 どこがどう悪いのか、具体的に書きたいが、全体的に演出がひどいから、例をあげる気が失せた。
  

●残忍さを楽しむしかない
 ならばこの映画は何を楽しめばいいのであろうか。それは「残忍さ」であろう。僕が他にこの作品で興味を持った事柄はなかった。
 英国軍に一人、いかにも悪役顔の将校がいる。こやつが賢い上にしぶとく、なかなかやられず、次々と惨たらしい行動をとっていく。この行動がとことんエスカレートしていくから面白い。主人公は彼の非道な行動に耐えきれず、憎しみを燃え上がらせるが、何だか主人公がわざとらしいほど可哀相に見えてくるよな盛り上がり。主人公と英国将校との対決は喧騒感たっぷりで、スローモーションの使い方は決して下手ではなく、この対決が見られるだけ良しとしたい。
 

最後に一言:エメリッヒは見た目だけ妙に大掛かりだなあ

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