ザ・ファン (レビュー)

The Fan

★★★

<アメリカ/1996年/サスペンス>
製作:ウェンディ・ファイナーマン/監督:トニー・スコット
原作:ピーター・エイブラハム/脚本:フォフ・サットン
撮影:ダリウス・ウォルスキー/音楽:ハンス・ジマー
出演:ロバート・デ・ニーロ、ウェズリー・スナイプス、
エレン・バーキン、ジョン・レグイザモ、ベネチオ・デル・トーロ

ネタをあかしています

●ロバート・デ・ニーロの怪演
 これは熱烈な野球ファンが、野球を盛り上げるために犯罪を犯すサイコ・サスペンスである。
 何はともあれ、ロバート・デ・ニーロの暴れっぷりが面白い。デ・ニーロはとにかく今にも人をぶん殴りそうな喧噪感をむき出しにして、カメラは奮い立つそのデ・ニーロの顔を極端なクロース・アップで捉えることにより、更にその暴走せんばかりの確執を描写した。少年と一緒に野球を見て、時間がないのに席を立てないデ・ニーロのシーンは、ファン心理を見事に掴んでおり、見事である。
  

●怖い怖い。でも一理あるのだ。
 開巻のデ・ニーロのナレーションは、まさしくファンの在り方を突き、説得力があり、妙に考えさせられてしまうが、一番興味深いのは、デ・ニーロとスラッガーのウェズリー・スナイプスが対面するシークエンスである。デ・ニーロはまず野球にさほど興味がないふりをする。するとスナイプスは、「ファンなんて最低だ。打てるときも打てないときもバッターは同じ人間だということをわかっちゃいない」などと心の内を話してしまう。熱烈なファンのデ・ニーロはカチンときて「ファンは大事だろ。ファンあっての野球だ」などと言い返す。だんだんとデ・ニーロは怒りを露わにするのだが、スナイプスが彼の異常さに気付きつつも平静を保とうとするあたりの心理描写がすこぶる上手い。この一幕は会話だけなのにサスペンスフルである。この怖さは2人の会話がお互い一理あることから生まれている。

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