エクソシスト (レビュー)

ディレクターズ・カット版
The Exorcist

★★★

<アメリカ/1973年/ホラー>
製作・原作・脚本:ウィリアム・ピーター・ブラッティ
監督:ウィリアム・フリードキン
撮影:オーウェン・ロイズマン、ビリー・ウィリアムズ
音楽:マイク・オールドフィールド
出演:マックス・フォン・シドー、エレン・バースティン、リンダ・ブレア、リー・J・コッブ

●27年前の人たちは刺激が足りなかったのかな
 ウィリアム・フリードキンが監督しているが、演出は妙にオーソン・ウェルズ・チックで、縦横無尽に動くトラッキング・ショットやズーム・ショットなど、画的にユニークである。こういうカメラワークから察するに、彼が撮りたかったものは、未だかつてなかった映画なのかもしれない。あらゆるシーンに彼の独自性がうかがえる。
 少女に悪魔がのりうつるというだけの内容を、延々と2時間も見せられてしまう映画であるが、少女が宙に浮いたり、突然ゲロをビュッと吹きかけたりして、27年前の人たちにしてみれば、びっくり仰天のショック演出がたっぷり。当時は失神したお客様もいらっしゃったそうで、大変な反響だったみたい。だから、あらゆる客層に受けちゃって、ホラー映画でありながら、珍しくアカデミー賞の候補にもなっている。まさにオカルト・ブームの火付け役みたいな感じだった。が、今更これを見ても、数々のスペクタクル場面のインパクトは実に薄いのである。現代はこういう映画が古く見える程とんでもない時代になったんだなあ。
  

●オバケ映画ならぬオバカ映画
 この映画ってなんだか笑えてくるんだよね。ホラーとコメディは紙一重ってこのことだね。この映画では、バカらしいことを真面目にやっちまってたから、今見るとなんか可笑しいんだよね。マックス・フォン・シドーが神父役というところから笑えるし、ウィリアム・フリードキンはひょっとして笑いを狙って演出したのではないかとさえ思えてくる。
 耳をすましているときにけたたましく鳴る電話、刑事さんの禿頭に注目するカメラ、刑事と神父のマニアックすぎる映画トーク、ぐるりと回転する少女の首、ボロボロになりながらも元に戻った少女がぴんぴんしているという矛盾、考えれば考えるほど可笑しい。
 展開もかなり強引で、動機なくショック・シーンをポツポツと見せていく演出は説得力に欠ける。シーンからシーンへの切り替え時のネタも弱く、無責任にシーンを切断された気がしてならない。見せ場が少なくて、だらだらとしたシーンの方が多いのも致命的だ。いたるところで悪魔のイメージを配置させているところは独特で、それを見つけるのも一興だが、この演出がわざとらしく、驚かせようと悪あがきしているようで、品位を落としている。
 そう、この映画は全体的にわざとらしいのだ。やはり、見せ物的な意味で作った印象は拭えない。僕が良かったと思ったのはマックス・フォン・シドーが出てくるプロローグだけだね。
 

最後に一言:サブリミナルを探せ!

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