フランケンシュタイン (レビュー)

Mary Shelley's Frankenstein

★★★★

【R指定】
<アメリカ/1994年/123分/ホラー>
製作:フランシス・F・コッポラ、ジェームズ・V・ハート、ジョン・ビーチ
監督・出演:ケネス・ブラナー/原作:メアリー・シェリー
脚本:ステフ・レイディ、フランク・ダラボンド/撮影:ロジャー・プラット
音楽:パトリック・ドイル/美術:ティム・ハーベイ
出演:ロバート・デ・ニーロ、ヘレナ・ボナム・カーター、
イアン・ホルム、トム・ハルス、アイダン・クイン、リチャード・ブライアーズ

ネタをあかしています

●不評か、絶賛か
 「フランケンシュタイン」を原作に忠実に映画化した作品だが、我々のフランケンシュタインのイメージを随分と変えてしまったので、公開当時は色々と話題になった。
 ・マッチョなケネス・ブラナーがやたらと素っ裸になる
 ・妙に時代背景とミスマッチしている生命誕生装置のデザイン
 ・カメラが異様に回転してばかり
 ・なくてもいいような濃厚なラブシーンにじっくりと時間をかけすぎている
 などの理由で、不当な評価を付けられてしまった感もあったが、古典ホラーとしてのボリュームはたっぷりで、ゴシック調の豪華セットだけでも見応えは十分であり、僕は、ここ最近の映画ではゲイリー・オールドマンの「ドラキュラ」と共にずば抜けて素晴らしいホラー映画だったといいたい。
  

●フランケンシュタインの名前
 フランケンシュタインといえば、ボリス・カーロフの演じた怪物が有名で、決定打であったが、逆にそのイメージが強すぎたおかげで、大衆はその怪物の名前をフランケンシュタインと勘違いしてしまった。本当は怪物を生み出した博士の名前がフランケンシュタインである。
 なぜ「フランケンシュタイン」というタイトルをつけたのか、疑問が残るかもしれないが、このケネス・ブラナーの映画を見て、ようやくそれを理解することができるだろう。この物語は、神に背いて生命を作ってしまった人間の苦悩と葛藤を描いた壮大なる心理ドラマなのである。主人公フランケンシュタインの行動は、ことごとく衝撃をもたらす。おぞましいというか何というか、あの怪物の不気味な容姿の恐怖以上に、フランケンシュタインの思想は恐ろしく、この物語の主軸となる興味深い演出である。
 

●複雑な人物関係が面白い
 ホラー映画は脇役が薄い特徴があるが、この映画は別で、登場人物がみんな複雑に絡み合っていて、面白い。人物のそれぞれの心中を探ってみると、何だか泣けてくる。みんな悲劇的なのだ。
 特に面白いのが、フランケンシュタインの花嫁のエピソード。フランケンシュタインが生み出した怪物の手によって殺されてしまうが、フランケンシュタインは彼女を羊水の中に入れて復活させてしまう。
 その後の展開は、ただただショッキングの連続で、開いた口が塞がらなくなる凄まじさである。こういうショッキングなシーンひとつひとつを、ゴシックロマン溢れる大がかりな演出で美麗に見せているが、これが生理的に恐怖を感じさせて、見事である。

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