バトル・ロワイアル (レビュー)

★★★★

<日本/2000年/アクション>
監督:深作欣二/原作:高見広春
出演:ビートたけし、藤原竜也、前田亜季

【R-15指定】

●かなり考えさせられた作品
 2000年公開映画では、「バトル・ロワイアル」は最も考えさせられた作品である。この映画はただものではない。粗筋だけ聞くと、いっけん安っぽい印象を受けるが、実は感動いっぱいの娯楽大作である。感動とはいっても、じーんと嬉しくなる感動とかではなくて、「こ、これは・・・」と何度も悩ませる感動がある映画だ。この感動は、映画が終わった後も頭から離れないものばかり。他の血みどろのドンパチ映画とは比べ物にならない神聖な楽しみがある。僕なんかは大感動してしまって、つい3度も続けて見てしまったほどだ。
  

●指令1 ゲームを満喫せよ
 正直言って、僕は視野が狭く、幼稚な男である。だから僕は、難しいことは考えずに、見た目の娯楽性だけを楽しんでいる場合が多い。ゆえに、僕はSF映画やアクション映画のように視覚的に刺激のある映画を好む。総合映画サイトを管理している僕がこんなことを書いてしまっては、ひんしゅくを買われてしまいそうだが、俺はアホな奴なんで、どうか大目に見てやってくれんかな。
 「バトル・ロワイアル」はそんな僕をのっけから大興奮させてくれた映画だ。とにかくこのゲーム感覚を満喫してもらいたい。僕が一番気にいっているのは、気絶した42人の中学生たちが、気が付いたときにはゲームの世界に連れてこられて、事態とは裏腹のアニメチックな姉ちゃんにナビゲートされて、いきなり冒険がスタートするまでのシークェンス。このとんでもなく唐突で大胆な展開は、電源を入れた途端に冒険が始まるロールプレイング・ゲームのそれを彷彿とさせ、遊び心たっぷり。プレイヤーたちがみんな地図とアイテム(このアイテムがそれぞれ攻撃力が違う)を持っているところもたまらんし、島のあちこちを歩き続ける様子はいかにもクエスト的。島のいたるところに病院とか建物があるのもゲームっぽいし、プレイヤーが死ぬと字幕ででかでかと「死亡 残り○○人」と表示されるところもそれっぽい。ゲームオタクの僕は断然嬉しくなった。
 というわけで、こういう感覚だから、殺し合いのシーンもユニークに盛り上がる。殺され方は多種多様で、みんな違った殺され方をする。このバリエーションだけでも面白いが、殺されるまでのプロセスもまたよくできていて感心させられる。灯台での少女たちの悲惨な戦闘画面は、構成力、演出力、全てにおいて見応え抜群。深作監督はほんとに70なのかよ?
  

●指令2 作品のテーマを探求せよ
 この殺し合いが魅力的に見えるのは、理由がある。この映画は人物が生きているのだ。各人に心があるのであって、ゆえに殺され方が悲しく見えてくる。フラッシュバックの使い方は見事の一言で、自殺した父の回想シーンなど、じんとくるものがある。
 一番面白いのはビートたけし扮する教師。原作は読んでないが、たぶん原作よりも魅力的に描かれていただろうと思う。ラストでひとりラジオ体操をした後、蜂の巣になりながらも「いてえ!」とか言って水鉄砲を撃ち、死んだかと思ったらむくっと立ち上がって、好きな子が作ったクッキーを食べて死ぬ。わざわざ島まで水鉄砲を持ってきたこの教師の生き方は、まこと考えさせられる。考えても結論にたどり着けないから、なお考える。
 「バトル・ロワイアル」に出てくる人物たちは、魅力的な人たちばかりである。殺人鬼まで魅力的である。登場人物たち各人の深い心の中を考えるだけで、僕はいつまでも感動がおさまらない。そういう余韻があるために、ラストシーンの渋谷の風景と2人の姿がとても味わい深い。考えれば考えるほど感動のある考えさせる映画だ。
 この映画はR-15指定になったことが問題になったが、それは当然である。15歳以下の中学生にこの映画のテーマを考える力はまだない。中学生にできるのはゲーム感覚に酔いしれることだけだ。しかしこの映画の主人公たちは中学生。考える力のない中学生が走る映画だから、面白いのだ。
 

最後に一言:映画館へ、走れ。

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