ブロンドと柩の謎 (レビュー)

ハリウッドは怖いところである
1924年、新聞王ハーストとその愛人マリオン・デイビス、喜劇王チャップリンらセレブたちが集って行われた船上パーティ。そのさなか、一人のプロデューサーが突如帰らぬ人となるが、その死については誰も語ろうとしなかった。これは「オネイダ号の謎」と言われ、ハリウッドでも有名な伝説である。これを映画評論家出身のピーター・ボグダノビッチがミステリー映画にでっちあげた。ハリウッドの内幕もので、しかも事実が元になっているとあれば、映画マニアの僕も見ないわけにはいくまい。
あくまでこれは「オネイダ号の謎」を描いた作品であるが、その本質は、100年間のハリウッド伝説のすべてを茶化しているといえる。ドラマとしての出来栄えは引っ張りが弱いが、テーマそのものがとても刺激的であるため、見終わった後も大きな余韻を残す。もしもこの事件で、チャップリンが殺されていたとしたら、事実はねつ造され、チャップリンは睡眠薬の飲み過ぎで死んだことになったかもしれない。この作品の毒は、ハリウッドでは普通にこのような事件が起きているのではないかと考えさせてしまうことである。マリリン・モンローはどうして死んだのか?などなど、その想像はとどまることなく膨らむ。そういう気持ちにさせたボグダノビッチはやはり偉大な映画作家である。

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