下妻物語 (レビュー)

今だからこそ面白い反則映画
★★★

脚本・監督:中島哲也
出演:深田恭子、土屋アンナ
(2004年日本映画)

 

 CMのノリを全編でやってみせるという発想は10年前から流行りだしたよくない傾向だが、「下妻物語」はこの手の作品が陥りがちな失敗を見事に克服しており、「アメリ」をもっとポップな和テイストにしたような、とにかく最後まで見せてくれる作品だ。

 反則ともいえる演出が序章から凄い勢いで繰り出され、映画では邪道とされるCM風のテロップも効果的に使われているが、ミスマッチな複数文化をゴッタニしたカラフルな映像でカンフル注射し、強引に見せきってしまうパワーには思わずウンと納得させられてしまう。いつまでもこの刺激が冷めないのは、何もない田園地帯ににわかに姿を表すジャスコや全長120mの大仏という適度な地形効果のアクセント、ボロボロの家にフリフリの衣装、のんびりにしてラディカルといった、数々のアンバランス要素の共存、そしてバラエティ豊かなキャスティングの妙。そう来たかと、思わずニヤリとさせる豪華な顔ぶれが登場するが、特に主演の深田恭子と土屋アンナはすこぶる好演である。二人とも場面転換直前の決めポーズらしきものを持ち、二人の会話のやりとりは、ごつごつした個性といい、ボケとツッコミの概念がまるで通用しないナンセンスの境地で、ここまで来ると愛さずにはいられない。

 全部がしっちゃかめっちゃかにして、そこに描かれているテーマの本質はしごくまともな友情物語であるという、万人受けのきっかけの巧さ。オタッキーなデザインのポスターを目にした失望をかき消すほど、見て良かったと思わせる秀作であるが、21世紀を多分に意識させてしまう作風には幾分か抵抗があり、だからこそこれは、今しか理解できない旬な企画といえるかもしれない。深田恭子が大人の女優になる頃には、これは赤面するほど古くさい映画になっていることだろう。

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