イン・ザ・カット (レビュー)

自分でイク映画
メグ・ライアンが脱いだことばかりが話題の中心になっているような気もする。たしかにこのメグ・ライアンは今までと全然違っていたし、まるでこれが初主演であるかのごとく、良い芝居をやっている。僕はふと「反撥」のカトリーヌ・ドヌーブを思い出したが、でもよくよく思えば、カンピオン監督の手にかかれば、とくにメグ・ライアンでなくてもこれは傑作だったと思うのである。一見、役者主体の映画のようであるが、それ以上に練りに練られたシナリオの恩恵を受けていることに気づかされる。「シナリオとは省くもの」。これは僕の持論だが、この映画のシナリオはそれこそ省略だらけ。説明的な箇所は極力排除され、観客自身にストーリーを自分勝手に補完してもらうことで、サスペンスをぐっと盛り上げている。性的興奮とか好奇心とかは、観客ひとりひとりが持っているものだから、説明しなくとも感じとることができる。ほとんどのシーンはメグ・ライアンの目線で描かれているが、たとえメグ・ライアンが自分と違う考えを持っていたとしても、それをあえて説明していないため、観客は自分の気持ちのまま、映画を体感することができるのである。だからこそ、この映画は本気で怖いのだ。

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