イグジステンズ (レビュー)

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★★★★

【R指定】
<アメリカ/1999年/SF>
監督・脚本:デビッド・クローネンバーグ
出演:ジュード・ロウ、ジェニファー・ジェイソン・リー、
イアン・ホルム、ウィレム・デフォー

ネタをあかしています。

●仮想現実体感映画
 デビッド・クローネンバーグの最新作である。
 この映画の材は”ゲーム”。とはいってもドリームキャストみたいなテレビゲームとは違い、仮想空間に入り込んで大冒険するヴァーチャルRPGである。
 脊髄に穴を開け、そこにゲームがインプットされた生物を有機的に接続し、脳でもってゲームを体感する。その世界はリアルで、どこかへんてこりん。
 主人公のジュード・ロウは、その世界で様々な体験をする。ただその体験を描いただけの映画であるが、その体験が、地味ながらも不気味で、最後まで目が離せない。
  

●ぶよぶよグロテスク映画
 クローネンバーグは毎度ねちょねちょしたホラー作品ばかりを発表しているが、ハイレベルな映画論に裏打ちされていて、第一級の映画ばかりだ。「イグジステンズ」もまたグロテスクなホラーでありながら、インパクトのあるゲーム世界を細かくクリエイトしている。
 まず早々、マッサージ器のように動く両生類クリーチャーを見て気色悪くなる。
 ゲームの世界に入ってからは、もう気味悪い映像のオンパレード。解剖シーンも多く、流れ作業で魚のはらわたをもぎ取っていくシーンの異様などは、たまらないものがある。これが目をそむけたくならずに、この先どこまで気持ち悪くなるか、興味をそそられるから不思議だ。
 劇中登場する突然変異生物の数は相当なものだが、一番強烈なのが、中華料理店のメイン・ディッシュとして出てくる特別料理。残飯みたいな料理を、主人公は平気な顔してむしゃむしゃと食べてしまう。しかも、その食べカスで何と銃を拵え、その銃の弾として、自分の”歯”を使うのだ。何というおぞましい発想力・・・。
 

●ひっかけアバンギャルド映画
 この映画はゲームの世界を描いた映画であるが、ゲームの世界の病気が、現実世界でも感染してしまうことがあり、現実と仮想空間の境界が曖昧になる。
 で、ジェニファー・ジェイソン・リー演ずるゲームデザイナーは、その才能のせいで、色々な人から命を狙われるのだが、誰がスパイで誰が仲間なのかはわからない。そこら変をクローネンバーグはどんよりと描いており、意外な展開を予期させることなく、次々と仕掛けてくる。そんな感じで、オープニングからラストシーンまで、強烈な印象を残し、結局現実か空想か曖昧なまま幕を閉じる。
  

最後に一言:見終わった後、この映画を見たことが夢のような気がしてきた。

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