マジェスティック (レビュー)

フランク・ダラボンは最近の監督では僕がもっとも関心をよせている監督である。毎回キャストを一新して、一本一本丹念に作るところが気に入っている理由だが、「マジェスティック」もまた冷静かつ丁寧に作られていて、僕はこの監督がますます好きになった。ダラボンの映画は非常に落ち着いた感じがある。わりかしローテンポのストーリーをじわじわと見せていくタイプで、見終わった後の余韻がまた良い。それにしてもダラボンの映画に出た役者はみんないい。「オペラハット」のクーパーを思わせる質素なスタイルで決めたジム・キャリーもこれで更に好感度が上がった。まったくこいつはなんでもできる奴である。
赤狩りを題材にしたことも興味深い。赤狩りと聞けば映画マニアならピンとくるはずだが、それがどういう事件なのかは漠然としか知られていなかったので、僕もとても勉強になった。重大なのにあまり知られていない事件を描くことで、時代色がうんと高まっており、そのムードを楽しむというだけでも点数は高い。このムードは50年代初頭の映画を見るのとは全然わけが違う。今の撮影機材で、あえて50年代初頭の時代を写し出そうとしているからこそ、そこに郷愁感が醸成され、時代の匂いを感じさせるのである。キス・シーンもこの時代色のお陰で美しい映像になった。

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