シュレック (レビュー)

パロディ型ナンセンス・コメディは、ハリウッドが苦手としているジャンルのひとつであり、今までにどれだけ駄作が作られてきたかわからない。失敗の理由として、芸術家および実業家を自任する映画作家たちがナンセンス・コメディにあまり価値を見いだしていないことにある。ナンセンス・コメディは観客への訴求力は大きいが、その期待にこたえられる映画作家がハリウッドにはいなかったのである。しかし近年の目覚ましい3DCGアニメブームの波にのれば、うまいぐあいにデジタル・キャラクターがナンセンス・コメディにマッチしてくれるのではないか?という結論に達してか、ここに「シュレック」が完成した。声優には人気スターを起用し、まさに超一流の作品に仕上げており、近年のCGアニメとしては最も目覚ましい成功を収めた作品である。
「パロディ」というカテゴリーは、難しい上にジンクスも多く、責任感さえ伴うのだが、この醍醐味を見事にモノにしている。ピノキオや赤ずきんなどのモチーフがいたるところに盛り込まれて、これがまた実に巧妙な見せ方で巧い。下手なナンセンス・コメディにありがちなあのどうしょうもない無駄な間もなく、エディ・マーフィをはじめ、トンチのきいた台詞の吸引力もなかなかのもの。
しかし一番の美点は痩せているフィオナ姫のグラフィックである。あのきめ細やかな表情と、あの愉快なしぐさ、重量感を感じさせるムーブメント(おそらくモーション・キャプチャーだろう)は、ディズニーの白雪姫の映像を見たとき以来の衝撃だった。アニメにありがちなゴム人形のような動きではなく、あくまで人間らしい動きを残しつつ、アニメ的な笑いを提供するフィオナ姫の存在感は確かなものである。ゆえに、彼女が第二形態になった瞬間からその魅力が失われてしまったのが惜しく、後半のロマンスが陳腐なものに見えてしまった。

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