アイ・アム・サム (レビュー)

7歳の知能しか持たないパパが、自分よりも頭のいい娘の養育権をめぐって法廷で戦う社会派ドラマである。これはもうストーリーについて話すよりも、ショーン・ペンの演技を何よりも誉めたい。彼の演技に評価プラス1である。台詞も面白いし、とてもかわいい。ときとして、娘のテディベアのように見えてくることもある。それくらいかわいい演技だった。頭が悪いために、自分の気持ちがうまく伝えられず、色々なことを考えて頭がパンクしそうになって、ひたすら「考えるんだ」と自分に言い聞かせながらも、どうすることもできない様子が、涙ぐましいくらい伝わって共感させられる。
ビートルズの話題を出しているのもマニアにはたまらない。「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」ほか、劇中流れる曲のすべてがビートルズナンバーというところも思い切ったところで、しかも後期の曲が中心というのがマニア心を揺さぶる。あえて全曲カバーで攻め、オリジナルは一切使わなかったことには理由があったに違いない。前期ビートルズ作品が60年代向けで一発録音のシングル志向だとすると、後期ビートルズ作品は、時代普遍的でじっくりと練り込まれたトータルコンセプトアルバム志向だといってよく、曲単体だけ聴いても本来の価値が発揮されず、コンセプトから逸脱したベスト盤(青盤)のせいでますます後期を理解できない人間が増えていくばかりだったのだが、そこで本作はカバーという解決策を投じて、90年代風オルタナティブサウンドにアレンジした。こうした方が作品の雰囲気にもマッチするだろうし、まだビートルズを知らない人にもわかりやすかったのだろう。
ついでだけど、ミシェル・ファイファーはますますきれいな女性になった。往年のハリウッド女優にも似た風格も見せて、好感度急上昇である。彼女の演じる役名がハリソンというのも、ジョージ派の僕としては大満足っす。

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