アイス・エイジ (レビュー)

この映画を見終わった時には衝撃が走ったものである。ストーリーはそれこそ単純で、スラップスティックもくだらないものばかりだが、しかし内に秘められた哲学だけは興味深い。この哲学にのめり込んでくれるかどうかがこの映画を受け入れられるか否かを決定する。これはぜひ気持ちをぐっと構えて見て欲しいものである。
この物語は、昔々、ほんとうの大昔、氷河期の物語である。親とはぐれた人間の赤ん坊を拾ったマンモスたちが、赤ん坊を親元に届けるために旅に出る話である。まったく種別の異なる動物たちが協力しあって旅をするのだが、どんな困難が立ちふさがろうとも、持ち前のガッツで乗り越えていく。この図式は「オズの魔法使い」に共通するが、主人公たちが皆マンモスやサーベルタイガーといった、大昔に「絶滅した生き物」であることがドラマをより味わい深いものにしている。ただ一人の赤ん坊を親元に返してやろうという、自分らには何の利益もないことに一生懸命になるところにスピリッツがある。それだけのためにどうして命がけであそこまでやれるのか考えて欲しい。そして最後には躊躇せずに天敵である人間に赤ん坊を返した絶滅動物たちの後ろ姿をじっくりと見てほしい。世の中はちっぽけではかないものだが、しかし生きているからには何かをやらなければならない。この哲学感がこの映画を美しい大作にしている。
映像もまさに美麗グラフィックで見応え充分。CGには見慣れている観客にも新鮮な感動があるのに違いない。動物たちの質感、動作もいいが、余計な飾り付けを一切排除して、登場人物皆がちっぽけに感じられるほど壮大な広がりのある神秘的な白銀の映像には未だかつてない衝撃を覚えた。

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