鳥 (レビュー)

The Birds

★★★

<アメリカ/1963年/ホラー>
製作・監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:ダフネ・デュ・モーリア/脚本:エバン・ハンター
撮影:ロバート・バークス/音楽:バーナード・ハーマン
衣装:イーディス・ヘッド/動物調教:レイ・バーウィック
出演:ティッピ・ヘドレン、ロッド・テーラー、ジェシカ・タンディ

ストーリーのネタあかしはしていませんが、作風のネタあかしはしています。

●ヒッチコックの作品では最も有名だが・・・
 この映画はヒッチコックの作品の中でも特に知名度の高い作品で、ヒッチといえば「鳥」という感じなのだが、僕にとってはこの作品が彼のワースト作品だと思う。
 独特の映像表現をしているところは楽しめるが、それ以前にストーリーが弱い。理由もなく鳥が襲いかかってくるので、他のヒッチ映画にあるようなシチュエーションの恐怖がなく、ただ単なる直感的恐怖しか体験できないのが残念である。
 今では古くなってしまった映画だが、ただし、その後に数多く登場する動物ホラーの草分けとして、一見の価値はある。
 

●何が怖いのか

 ヒッチコックがいうには、この映画では鷲や鷹のような獰猛な鳥ではなく、カモメやカラスといった平凡な鳥が人を襲いかかるところに恐怖があるという。
 よって、この映画で”殺し”をするのは、人間ではなく、動物である。ヒッチ映画は”殺しのシーン”が毎度のお楽しみなので、その点ではこの作品は、少し物足りない気がしないでもなかった。
 

●ヒッチコック流の演出はなぜか脳裏に焼き付く

 この映画でも、ヒッチコックお得意のトリック演出は堪能できる。
 ジャングルジムに飛んでくるカラスの数が少しずつ増えていくシーンは、静かながらもショッキングな恐怖である。
 ガソリンスタンドで火災が発生するシーンでのヘドレンの表情のカットも、被写体のアクションではなく、編集の効果だけで動きを見せており、面白い。
 ヘドレンが部屋の中で鳥の大群に襲われ、袋の鼠状態になるシークェンスでの短いショットの組み合わせも、さすがだ。この撮影のとき、ヘドレンを実際に縛って逃げられないようにしていたという逸話は、ヒッチ神話のひとつとなっている。 
 

最後に一言:ヒッチも歳だったのか

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