真夏の夜の夢 (レビュー)

William Shakespeare's A Midsummer Night's Dream

★★1/2

<アメリカ/1999年/ファンタジー>
製作・監督・脚本:マイケル・ホフマン
原作:ウィリアム・シェイクスピア/音楽:サイモン・ボスウェル
出演:ルパート・エベレット、カリスタ・フロックハート、ケビン・クライン、
ミシェル・ファイファー、スタンリー・トゥッチ、ソフィー・マルソー

ネタをあかしています。

●他愛ない劇。問題は恋が描けているかどうか。
 さて、まずは話を映画からそらし、原作に視点を向けよう。
 著者はシェイクスピアだが、僕は彼をすごく敬愛している。最も愛する劇作家だ。ユーモラスだし、台詞も面白いし、ドラマチックだから好きだ。
 しかしシェイクスピアの喜劇で一番有名なこの「真夏の夜の夢」はどうも僕のタイプではない。今まで何度映画化されてきたかわからないが、僕が見た作品はどれも失望させられた。
 もともとこの劇はストーリーが薄いと思う。4人の男女関係を妖精のいたずらでごちゃごちゃにしたあと、最後には一件落着という筋書きで、なんと他愛ない・・・。こうなると、シェイクスピアお得意の熱い熱い恋言葉を楽しむしか能がなくなってくる。
 恋言葉の面白さは、シェイクスピア劇のほとんどに共通していることで、いくらそれだけの他愛ないストーリーとはいっても、それは恋愛ドラマの基本中の基本であり、さすがシェイクスピア、恋を描かせて右に出るものはいないと思わせる。
  

●さてこの劇をどう料理したか
 先ほど、この劇は他愛ない内容ではあるが、恋の鞘当てが面白く描かれているということを話したが、さて、「恋の闇 愛の光」のマイケル・ホフマン監督は、これをどう料理しただろうか。
 何と、時代を20世紀初頭に置き換えて映画化した。だから自転車も出てきて、一見英国庭園を思わせる作風である。その時代のまま、主人公たちを中世の森の中に連れ込んで、妖精たちを登場させるなど、かなり無理があると心配していたが、わりとすんなり描けている。メンデルスゾーンの同名の曲を使っている点も嬉しいし、画的にも、美的で大変宜しい。しかし、やはりシェイクスピアのこの他愛なくも土台の固いストーリーはどうすることもできなかったようで、脚色も平凡。せっかく綺麗な映画なんだから、もう少しメルヘンチックにいってもよかったのではないだろうか。だから評価はちょっと低目にした。
 

最後に一言:シェイクスピアの描く若者は皆一途

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